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貴女の一日が終わる時に、
そばにいるよ、ずっと。
「ん?なんだフラン、寝るのか?」
「…う、ん…」
うと、うと、うと。睡魔に襲われて頭がぼんやりとする。誰しも共通の出来事。
傍らに居る魔法使いに問われて、フランドールは少し覚束無い返答をした。何しろ、頭が正常に動かない、訳なのだから。
そうかと言って魔理沙はぽす、と優しくフランの頭を撫で始めた。おやすみの代わりに。
妖怪でも、巫女でも、魔女でも、幽霊でも、吸血鬼でも矢張りその行動をしてもらうと安心する。
心地良さそうに傍らに居る魔理沙に身を預け、すぅと紅く幼い瞳を閉じる。
暗闇。でも怖くはない。厭でもない。
安心する暗闇にフランドールは飲み込まれて行った。
「寝たな。」
静かに聞こえる寝息が何よりの証拠。魔理沙は呟いた。
こっそりとそっと寝顔を見やる。幼い、けれど自身よりはもっともっと長く長く生きている、吸血鬼。
矢張り幼く見えるのは人間よりも自分よりも寿命が長いからだと判りきってはいる。判りきっている、から。
だからずっと一緒にはいられない。
「……」
考えて悲しくなった。
彼女が、フランが此処まで大人しく安定して来たのは姉のレミリア曰く自分のお蔭だそうだ。
少し照れるけどその反面自分が死んでしまった後が不安になる。
フランは私がいなくなったら出会う前に戻ってしまうのだろうか、とか。他にも沢山あるけれど一番の不安はそれである。
ずっとずっとそばにいてあげたいけれどやはり生きれる長さがあるから。
吸血鬼と人間の、差が。
「なぁ、フラン」
「私はお前のそばに、いて良いのかな」
これからもこれからもずっとずっと、君のそばに私は居て良いのかな。
死した後きっと君は悲しむ。唯一の支えを失った君はきっと、きっと。
「…あー、馬鹿か私は」
やっぱりやめた。いつもの自分らしくない。
心の中でそう思ってふーと一息。眠るフランドールから伝わる体温が少しだけ熱くて少しだけ厭になった。
勿論自分にも嫌気がさした。
せめて、
君の一日が終わるその時だけ、
そばにいるよ、ずっと。
言えないんじゃなくて、言わないだけ。
でも、ある種、言えないのかもしれない。
うんうんと早苗は悩む。神社のとあるところ、お茶を片手に。
真面目な彼女にしては珍しく掃除等は途中放棄らしい。
ズズッ。茶を一口啜る。渋味と微量の甘味が口に広がり、しかしじっくり味わわず飲み下す。
何時もなら神奈子や諏訪子が何かと寄って来るのだが今回は居ない。
神奈子は兎も角、諏訪子が居ないのが良く判らない。
そもそも早苗は何故諏訪子が此処の神社に居る事すら良く知らないのだ。
「はぁ…」
溜息が出た。
「うーん…」
唸り声が出た。
その唸り声は其の儘静かに消えていった。
静かに消えていった言葉と同様に静かな周囲。何せ山奥。仕様がない。
言葉が引き金になってまた早苗はうんうんと悩み始める。
彼女が何についてそんなに悩んでいるのか、と言うと。
博麗神社の事だ。
「…なんで、」
信仰もクソもありゃしない、と巫女は言った。そうだ幻想郷には信仰心がまるで無い。
だから何時まで経ってもあそこの賽銭には一円も入らないのだ。
そんな判りきった事を、だけど一つだけ判らない。
博麗神社は、あそこはなんであんなに賑やかなのか。
否何時も賑やかってそう言う意味ではないのだけれど、しかし此処の神社と比べると賑やかで人気も多い。
場所も場所と言う事もあるのだろうけど如何せんわからない。
信仰は此方の方が絶対に上回ってると思うのに。
なのに、なのに。
「はぁ…」
再び溜息が出た。
絶対、それが羨ましいなんて言わない。(言えない。)
(ただのちょっとした強がり。)
もう、きっと疲れたんだ。
「疲れちゃったのよ」
戯言を一人呟き、其れが其の儘消えていく。残したくもないから如何でも良い。消えるなら其の儘、流れに逆らわず。
伸ばした手の先は天井を指し、けれど短過ぎるから届かない。くだらないから力を抜いて崩した。
先程の行動に意味は無い。在ったらおかしい。
嗚呼、何て馬鹿な事を。
「夏バテかなぁ」
大の字で仰向けに寝転がっていながらまた呟く。
今は夏。太陽の強い日差しのせいか、最近何にもやる気が出ないのだ。
何故か近頃になって友人が全く遊びに来ない、と言うのも原因の一つかもしれない。
故に掃除は放って置いた儘。
家事は自分が生きて行く為に必要だから最低限やってはいる、と。
蝉の鳴き声。歪む彼方。何処までも澄み渡る青空。そして太陽。
(貴女が居ない。)
違う違う。ああそんな事今は如何でも良い!
景色を見て刹那に思ってしまった事を慌てて打ち消す。情けなく顔を少しだけ紅く染めて。
ぶんぶんっ、勢い良く頭を振ったら抱えて、馬鹿みたいだと自嘲。
(聞きたいな、)
したけど頭から離れなかった。
(貴女の声。)
(欲を言えば貴女の瞳も見たいな。)
うああっ!違う違う馬鹿馬鹿馬鹿何考えてるのっ!
ぶんぶんぶんぶんっ、痛い位に頭を振って振って振って。汗の飛沫も飛ぶ飛ぶ。
くそぅ自分らしくない、ぎりと唇をかみ締めて恥ずかしさとかに耐える。ああもう!
刹那に、
「よぉ霊夢、何一人で怪しい事してんだ?」
聞こえた愛しい声。
嗚呼、待ち侘びた貴女の声。そして私を見据える淡黄色の瞳。
声を聞いた瞬間、瞳で見つめられた瞬間、
死んでも良いとさえおもった。(同時に疲れも打っ飛んだ)
(君が居れば暑さ何かには負けないよ、絶対。)