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暮雨吉
自己紹介:
 東方(旧作)や音楽などで生きてます。
 ご用の方は以下からどうぞ。
 kuk-ku●chan.ne.jp(●→@)
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「おねーえちゃんっ」
ベッドへ横たわっているさとりに、遠慮なく覆い被さる。ぎしりと刹那にスプリングが軋み、しかしそれだけでベッドは二人分の体重を受け止めた。
「……安眠妨害です、こいし」
「無意識」
眠たそうに細められた瞳で少し睨むようにこいしを見つめる。言葉通りさとりは寝ていたのだ。
昼下がりはどうしても眠くなる。彼女はその睡魔に抗わずあっさりと受け入れ、こいしがこうして安眠を妨害するまで心地よく寝ていたのだった。
半ば怒られるようにさとりに言われ、しかしこいしは悪びれた様子も無く口癖と化した言葉を使う。
「…うそつき」
その言葉に少しむっとなったからさとりは、ぼそりと小さな声でこいしにそう呟く。
「嘘じゃないよ。お姉ちゃんなら判るでしょう?」
「判りませんよ。…あなたの思ってることは、特に」
それは嘘ではない。事実だ。閉ざしてしまったこいしの心は、さとりでも見ることは出来ない。その旨は大分前から彼女に伝えているはずだけれど、事ある毎にこいしはさとりに能力の使用を強いる。
その行動に果たしてどんな意図が組まれているのか、心が読めやしないからさとりは全く以って理解出来ない。たとえ心が読めていたとしてもこいしはよく解らない人物になっただろう。
不思議に思うのだ、どうしてそんなに心を読む読まないに執着するのか。
「………」
よく、解らない。


不安に思うのだ。だってただ一人だけ心が読めないだなんて、そんなの、
「…おねえちゃん」
「ん、なんですか…」
「わたしの、思ってること、…わかる?」
眠そうな声色で返事が返ってきてああ眠いんだと判ったけれども、構わずにこいしはさとりの睡眠を妨害した。
大分前から、否、こいしが“心を読む程度の能力”を閉ざしてから、さとりはこいしの心を見ることは出来なくなった。それをこいしは重々承知している。解っているけれども、それでも何度でも訊いてしまう。
唯一心が読めないだなんて、なんだか拒絶されているみたいで。
寂しくなんかならないけど、不安になる。
「……判り、ません。こいしの思ってることは、とくに」
抱きしめたさとりの、顔は見えない。ただ彼女のその細い身体から体温がぬるく伝わるだけ。酷く、気持ち悪かった。
「残念だなぁ…」
嘲笑うような、諦めるような、でも諦められないような、そんな渇いた笑いを浮かべる。
浮かんだ続きの言葉はそっと胸にしまっておいた。

こんなに大好きであいしてるのに。
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「ホントに、くる?またくる?来てくれるの?」
「もう何回も言ったんだけどな…」
やれやれとため息をつく。心配性、とでも言えばいいのだろうか。何か違う気がする。
かれこれこの台詞を何度も聞いたし、かれこれこの台詞も何度も答えた。このしつこさは何なんだ。
「また来るってば、本当に。嘘じゃないぜ」
ぽんと頭に手をのせて優しく撫でる。こうすれば多少は信じてくれるだろうと思う。案の定パルスィは少し気持ちがよさそうに目を細めた。
「さっきから何度も言ってるだろう?それでもお前は心配、か?」
否きっと心配だからこうして何度も訊いているのだろうけど。言った直後に自分の言葉を心の中で否定する。なんだか矛盾してるな。
パルスィはじぃとこちらを見て、何か考え込むように、もしくは少し躊躇うように間をあけてこくりと控えめに頷いた。
口約束は簡単に出来る代わりに、脆く崩れやすい。そこをパルスィは執拗に心配し、何度も何度も訊いてくるんだろうなぁ。そしてさっきはそれだけじゃ駄目だと意思表示もした、訳だ。
そう、だな。そう私は零してから少し考え込む。彼女が満足しそうな約束の方法、とか、あっただろうか。第一約束の方法なんて限られてるし、そんなに知らないし、だからすぐに結論は出た。
「パルスィ、指、小指出して。こうやって」
「…こゆび?」
「そ、小指」
怖ず怖ず、とだけれど言われた通りに彼女は小指を出してきた。素直でいい子だと思いながら私はその指を自分の指と絡めた。パルスィは首を少し傾げて、何をするのと目で訊いてきた。くすり、薄く笑って私は口を開く。
「これはな、“指切りげんまん”っていう約束の方法なんだぜ」
「ゆびきりげんまん…?指を切っちゃうの?」
「違う違う、実際に切る訳じゃないぜ」
かわいらしい解釈だ。まるで幼い子供のよう。そして自分はそれを見守る母親、か。とかそんなくだらないことを思った。
「まぁ由来で“指きり”は遊女が客に不変の愛を誓う証として小指の先を切ったって言うけどな。今から私たちがやるのはそれとは違うものだ」
「何をやるの?」
「このまま小指を絡めたまま、“指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。指きった。”ってお互い言いながら“指きった。”で指を放すんだ。簡単だろ?」
そうやって顔を覗き込むとパルスィは頷いた。満足、してくれたみたいだ。よかった。
「じゃ、行くぜ?」
「うん」
何かを行う前って云うのは大抵わくわくしたりどきどきしたりする。今もそうだ。だから思わず顔が緩んだ。それはパルスィも同じだったみたいで、口許が嬉しそうだった。
さっき思ったことでパルスィは子供で、私はそれを見守る親と例えたけれど、今はお互い子供みたいだと、思った。それでも、いいと思う。

『指きりげんまん、嘘ついたら…』



小指に誓います。


水橋、パルスィ。嫉妬心を操る程度の能力。それ故に本人も嫉妬に狂っている。
それは重々承知のはずだった。それを踏まえて仲良くしたいと、友達になりたいと思った。
けれど、

「私たちは…友達のはず、だろう……?」
「あなたはそうだったのかもしれないわね」

わたしは違うけど、と。私の言葉を彼女はあっさりと否定した。そんな、何で。

「ぱる、」

ぐっ、と首を絞めている手に力を込められ言葉が途中で途切れた。名前すら、呼ばしてくれないのだろうか。
最初は苦しいのだ、絞められると。けれどだんだんとあたまに血がいかなくなり酸素もいかなくなりぼぅとしだしてくる。身体にちからが、入らない。パルスィの腕を懸命にはなそうとしてまわしていた手が、ずるりとおちる。ヤバイ、な、これ。
まだ死にたくない。まだ色々とやり残したことがあるのだ。
たとえばフランともっと遊んでいたいだとか。最近おちついてきたんだよな、アイツ。
あとパチュリーにしぬまで借りてるほんをまだぜんぶ読んでないとか。借り損じゃないか。
霊夢にまだいちども勝ったことないとか。いつか絶対負かす。まってろバーカ。
あと、あと、あと…。

アリス。

「アリス…」

おもい出したら胸がいたくなった。アリス、アリス、アリス。なんでこんなに胸が切ないんだろう。アリス。

「…っ、な、…で…ソイツのっ…!」

パルスィが何か言った気がして、そしたら首に加わってた圧力が急になくなった。げほ、むせ返って思い切り空気を吸い込む。目にはたくさんの涙が溜まってた。
急に頭に血と酸素が行き渡ったせいかぐらぐらする。がんがんする。
不意にパルスィの方を見たら、泣きそうな顔で私を見ていた。目が合うと、俯いて逸らされてしまった。
何だかこちらが悪い事をしたみたいな気持ちになってくる。一応私が被害者なんだけどな。少しだけ笑いがこみ上げて来る。

「パルスィ」

私の声に怯えて、びくりと肩を震わせた。そんなに怯えるなよ、と言うか普通私が怯えるほうじゃないのか。

「な、こっち見ろよ」

ぽんと優しく肩に手を置いたらやっぱり肩を震わせられて、やれやれと少しため息を吐く。やっぱり何だかこちらが悪いことしたみたいな気持ちになってくる。
とりあえず私は、思ったことを口にする。

「さっきの、こと…だよな」
「…………わたしの性格、知ってるでしょ」
「ああ、嫉妬狂いって所か?重々承知だぜ」
「ならわたしが…っ、こうなることぐらいわかるでしょ!?」

泣きそうな顔のままで、パルスィは言葉を続けた。

「わたし、あなたが好きなの。まりさがすきなの。ねぇまりさ、知らなかったでしょ?だってあなたそういうところは鈍そうだもの。あなたの周りのひともそう思っているんじゃないかしら」
「……ぱるすぃ」
「すきなのに、こんなに好きなのに…。あなたはそれに気づいてくれないし、わたしなんかみてくれないし。第一まりさはわたしが嫉妬深いって知ってるでしょう?それなのに、それなのに……さっき、アリ、スっ…、て」

アリスの名前を出した途端、パルスィは泣きそうな顔で泣き出した。私はどうすればいいのか判らず、おろおろするしかなかった。
だってさっきのパルスィの告白にも応えてやることは出来ないし、もともと彼女とは友達として仲良くしていきたいと思っていたから。だから嫉妬狂いだけれど仲良くしようと思ったのだ。

「まりさ…まりさぁ…、わたしいがいみないでよ。わたしいがいはなさないでよ。わたしいがいおもわないでよ。ずっとずっとそばにいてよはなれないでよ。ねぇまりさぁ……」

私は、パルスィに応えてやることは出来ないのだ。
だからどうすればいいかわからずに、おろおろするしか、ないのだ。



あなたと私のクライシス
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