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暮雨吉
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 東方(旧作)や音楽などで生きてます。
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駄目になる。

マエリベリー・ハーンは只管に空気を求める荒い息を、懸命に整えていた。必死で全身に血液を巡らす心臓を、懸命に抑えていた。
流れ出る汗を拭わずに、彼女の視線は暗い地面を見つめている。

こわくなる。

「…は、っ」

触れた手があたたかくて、やわらかかったとか。
垣間見せた仕草や素振りが、とても愛しかったとか。
全部、忘れなきゃ。
全部、忘れないと。

気づいてしまう。

「…は、……」

こわくなる。

すべてが夢で在れば良かった。
そうだったらこんな苦しい思いをしなくてすんだのに。
けれど、これは痛い今で。


「蓮子…」


後に戻れない、痛い痛い刺さった想いに、涙が出そうだった。









(*aikoさんの「二人」を題材に、書いてみました。あれ、なんだかとてもメリーがかわいそうな話に…)
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ぐ、と本に手を伸ばす。けれど届きはしない。でももう少しで届きそう。ぐぐぐ、自然とかかとが上がった。けれどまだ届きはしない。魔理沙は悔しそうに一度本を睨み再び手を伸ばした。
「…飛べばいいじゃないの」
そうやって本を必死に取ろうと奮闘している彼女にパチュリーはもどかしくなって声を掛けた。
一応、じゃなくて魔理沙は立派な魔法使いだ、まだ人間だけど。魔法で飛ぶなんて造作もない。だから使えばいいのに、なんで使わないんだろう。別段飛行魔法を知らない訳ではないだろうに。だったら箒で飛んでるのは何って話だ。
声を掛けられた魔理沙はまだ幼さが残る顔をパチュリーに向けた。
「いや、な。もう少しで届きそうなら、自分自身の力で取りたくて」
嗚呼、努力家な彼女らしいな、とパチュリーは頭の片隅で思った。
魔理沙はそう云って薄く笑った後、また本に手を伸ばす。ぐぐぐ、とかかとを上げて背伸びして、必死に必死に取ろうと懸命に頑張っている。それは小さな子供が必死に何かを取ろうとしている姿にも見えて、思わず笑みが零れた。
ホントに、彼女らしいな。
すぃ、とパチュリーは飛行魔法を慣れた手つきで発動させ、いまだ必死に本を取ろうと懸命に頑張っている彼女の方へ近づいた。
その気配に気づいた魔理沙は、近づいてくるパチュリーにきょとんとした視線を向けたのだけれど、彼女はそれを無視した。魔理沙が必死に取ろうとしていた本を棚から取り出し、彼女に差し出す。
はい、と言って、
「もどかしいわよ、見てて」
澄んだ声が図書館に響く。静かな所だから余計に響いた気がする。魔理沙はその言葉に少し苦そうに笑って、差し出された本を受け取った。
「ありがと、な」
「いいわよ別に」
手に入った本を読む為に魔理沙は席へ向かう。その後姿を、パチュリーは見つめる。

(もう少し、なのに。)
(ほんの、少し、なのに。)

彼女と私の背丈は違う。少しだけ、彼女のほうが高い。
私は、
魔法に頼らなければ彼女と同じ目線に立つことも、見下ろす事も出来ない。

(魔理沙、)

嗚呼、もどかしい。


「ねぇ蓮子」
「なぁにメリー」
唐突にメリーが蓮子を呼ぶ。蓮子は普段通りに答えた。
「あなたは専攻で物理を学んでいるのよね?」
「ええ、そうね」
何を今更確認する必要があるのだろう、そう思ったけれど言わないでおいた。メリーのことだから何かあると思う。
メリーは前髪を耳にかけ、少し低いトーンで声帯を震わす。
「世の中、つまらなくないの?」
きょと、と蓮子は目を少し見開く。鳩が豆鉄砲を食らったみたいだと思ったけれど、まぁそれはそうだろうとメリーは一人自答していた。
「…むぅ」
「あら」
「そんなの考えたこともなかったわ」
ぐいと自前の帽子を目深に被って、蓮子はつぶやくように答える。本当のことだ。
けれど、メリーが訊いたことも本当のことだ。
物理、とはそのままで捉えると「物の理」、つまり物体の全てのことである。それを専攻して学ぶと言うことは物体の全てを知ると言うことで、逆に全てを知ってしまうと全てのことがつまらなく感じてしまうかもしれない。メリーはそこに到ってこうして訊いてきたのだろう。
物理を学ぶことがつまらない、何て。思ったことなかった。と云うか、考えたことがなかった。
「…んん、もしかしたら世の中つまらないかもしれないわね」
「やっぱり?」
「ま、それはあなたと出会わなければの話だけれど」
「…え?」
今度はメリーが目を少し見開く。鳩が豆鉄砲を食らったみたいだと蓮子は思った。ん、さっきの自分はこんな顔をしていたのか。くっくっ、笑いが洩れる。
「な、何よぅ」
照れたように、そして少し怒ったようにメリーが顔を赤らめて睨む。
「物理の全てを以ってしても、あなたの見えている世界が解けるとは限らない。それが私を楽しませてくれる」
笑いながらそういうと、唐突のことだからだろうかあんまり理解できてないメリーがいた。
「つまりね、メリー」

あなたがいるから、世界が楽しく感じるのよ。





  綱 。 








「それはつまり私がいないと蓮子は生きていけないって事ね!」
「…そういうことになるの?」
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