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「ホントに、くる?またくる?来てくれるの?」
「もう何回も言ったんだけどな…」
やれやれとため息をつく。心配性、とでも言えばいいのだろうか。何か違う気がする。
かれこれこの台詞を何度も聞いたし、かれこれこの台詞も何度も答えた。このしつこさは何なんだ。
「また来るってば、本当に。嘘じゃないぜ」
ぽんと頭に手をのせて優しく撫でる。こうすれば多少は信じてくれるだろうと思う。案の定パルスィは少し気持ちがよさそうに目を細めた。
「さっきから何度も言ってるだろう?それでもお前は心配、か?」
否きっと心配だからこうして何度も訊いているのだろうけど。言った直後に自分の言葉を心の中で否定する。なんだか矛盾してるな。
パルスィはじぃとこちらを見て、何か考え込むように、もしくは少し躊躇うように間をあけてこくりと控えめに頷いた。
口約束は簡単に出来る代わりに、脆く崩れやすい。そこをパルスィは執拗に心配し、何度も何度も訊いてくるんだろうなぁ。そしてさっきはそれだけじゃ駄目だと意思表示もした、訳だ。
そう、だな。そう私は零してから少し考え込む。彼女が満足しそうな約束の方法、とか、あっただろうか。第一約束の方法なんて限られてるし、そんなに知らないし、だからすぐに結論は出た。
「パルスィ、指、小指出して。こうやって」
「…こゆび?」
「そ、小指」
怖ず怖ず、とだけれど言われた通りに彼女は小指を出してきた。素直でいい子だと思いながら私はその指を自分の指と絡めた。パルスィは首を少し傾げて、何をするのと目で訊いてきた。くすり、薄く笑って私は口を開く。
「これはな、“指切りげんまん”っていう約束の方法なんだぜ」
「ゆびきりげんまん…?指を切っちゃうの?」
「違う違う、実際に切る訳じゃないぜ」
かわいらしい解釈だ。まるで幼い子供のよう。そして自分はそれを見守る母親、か。とかそんなくだらないことを思った。
「まぁ由来で“指きり”は遊女が客に不変の愛を誓う証として小指の先を切ったって言うけどな。今から私たちがやるのはそれとは違うものだ」
「何をやるの?」
「このまま小指を絡めたまま、“指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。指きった。”ってお互い言いながら“指きった。”で指を放すんだ。簡単だろ?」
そうやって顔を覗き込むとパルスィは頷いた。満足、してくれたみたいだ。よかった。
「じゃ、行くぜ?」
「うん」
何かを行う前って云うのは大抵わくわくしたりどきどきしたりする。今もそうだ。だから思わず顔が緩んだ。それはパルスィも同じだったみたいで、口許が嬉しそうだった。
さっき思ったことでパルスィは子供で、私はそれを見守る親と例えたけれど、今はお互い子供みたいだと、思った。それでも、いいと思う。
『指きりげんまん、嘘ついたら…』
小指に誓います。
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