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暮雨吉
自己紹介:
 東方(旧作)や音楽などで生きてます。
 ご用の方は以下からどうぞ。
 kuk-ku●chan.ne.jp(●→@)
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水橋、パルスィ。嫉妬心を操る程度の能力。それ故に本人も嫉妬に狂っている。
それは重々承知のはずだった。それを踏まえて仲良くしたいと、友達になりたいと思った。
けれど、

「私たちは…友達のはず、だろう……?」
「あなたはそうだったのかもしれないわね」

わたしは違うけど、と。私の言葉を彼女はあっさりと否定した。そんな、何で。

「ぱる、」

ぐっ、と首を絞めている手に力を込められ言葉が途中で途切れた。名前すら、呼ばしてくれないのだろうか。
最初は苦しいのだ、絞められると。けれどだんだんとあたまに血がいかなくなり酸素もいかなくなりぼぅとしだしてくる。身体にちからが、入らない。パルスィの腕を懸命にはなそうとしてまわしていた手が、ずるりとおちる。ヤバイ、な、これ。
まだ死にたくない。まだ色々とやり残したことがあるのだ。
たとえばフランともっと遊んでいたいだとか。最近おちついてきたんだよな、アイツ。
あとパチュリーにしぬまで借りてるほんをまだぜんぶ読んでないとか。借り損じゃないか。
霊夢にまだいちども勝ったことないとか。いつか絶対負かす。まってろバーカ。
あと、あと、あと…。

アリス。

「アリス…」

おもい出したら胸がいたくなった。アリス、アリス、アリス。なんでこんなに胸が切ないんだろう。アリス。

「…っ、な、…で…ソイツのっ…!」

パルスィが何か言った気がして、そしたら首に加わってた圧力が急になくなった。げほ、むせ返って思い切り空気を吸い込む。目にはたくさんの涙が溜まってた。
急に頭に血と酸素が行き渡ったせいかぐらぐらする。がんがんする。
不意にパルスィの方を見たら、泣きそうな顔で私を見ていた。目が合うと、俯いて逸らされてしまった。
何だかこちらが悪い事をしたみたいな気持ちになってくる。一応私が被害者なんだけどな。少しだけ笑いがこみ上げて来る。

「パルスィ」

私の声に怯えて、びくりと肩を震わせた。そんなに怯えるなよ、と言うか普通私が怯えるほうじゃないのか。

「な、こっち見ろよ」

ぽんと優しく肩に手を置いたらやっぱり肩を震わせられて、やれやれと少しため息を吐く。やっぱり何だかこちらが悪いことしたみたいな気持ちになってくる。
とりあえず私は、思ったことを口にする。

「さっきの、こと…だよな」
「…………わたしの性格、知ってるでしょ」
「ああ、嫉妬狂いって所か?重々承知だぜ」
「ならわたしが…っ、こうなることぐらいわかるでしょ!?」

泣きそうな顔のままで、パルスィは言葉を続けた。

「わたし、あなたが好きなの。まりさがすきなの。ねぇまりさ、知らなかったでしょ?だってあなたそういうところは鈍そうだもの。あなたの周りのひともそう思っているんじゃないかしら」
「……ぱるすぃ」
「すきなのに、こんなに好きなのに…。あなたはそれに気づいてくれないし、わたしなんかみてくれないし。第一まりさはわたしが嫉妬深いって知ってるでしょう?それなのに、それなのに……さっき、アリ、スっ…、て」

アリスの名前を出した途端、パルスィは泣きそうな顔で泣き出した。私はどうすればいいのか判らず、おろおろするしかなかった。
だってさっきのパルスィの告白にも応えてやることは出来ないし、もともと彼女とは友達として仲良くしていきたいと思っていたから。だから嫉妬狂いだけれど仲良くしようと思ったのだ。

「まりさ…まりさぁ…、わたしいがいみないでよ。わたしいがいはなさないでよ。わたしいがいおもわないでよ。ずっとずっとそばにいてよはなれないでよ。ねぇまりさぁ……」

私は、パルスィに応えてやることは出来ないのだ。
だからどうすればいいかわからずに、おろおろするしか、ないのだ。



あなたと私のクライシス
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暇、遠くで聞こえた気がした。衣玖はそれを無視する。ひまひま、今度ははっきりと聞こえた。それでも無視を決め込む。暇ぁ!最後に近くで聞こえ、衣玖に何かが突進。予期せぬ自体に彼女は反応が出来ずにそのまま倒れた。
「衣玖ー!暇ぁー!清清しく暇ぁー!」
清清しく暇、とは、一体どういう意味だろう。言葉通り清清しいくらい暇なのだろうか。ぼんやりと衣玖は思いながら、突進ではなくボディーブローをかました天子を見上げる。子供が駄々をこねるような表情でこちらをじっとりと見ていた。
たぶんこころのうちを読むとしたら、簡潔に「暇」。
「…暇でも何でも突進しないでください痛いです重いですそしてうるさいです」
「総領の娘にその口の利き方は何よ!」
「素直に言ったまでですよ」
むぅ、と目の前の幼い顔がむくれた。どうでもいいから衣玖は暫く背中や顎や首やその他諸々現在ものすごく痛い箇所の痛みが退くまで、その幼い顔の持ち主を 放置しておくことに決めた。出来ればこうして放置している間に天子が飽きて、他の人物の所へ行ってしまえばいいとも思う。きっと叶わないだろう、なんて。 解っているけれども。
今自分たちがいる場所、つまり天界は、何も無い。強いて言えば桃と酒、あとは天人たちの宴。それくらいしかない。
地上の人間たちはどうやらこの天界に恋焦がれているようだけれど、こんな何も無いところ、求めた所で何も無いから何も得ることは出来ないだろう。
天界は何も無い所。そして目の前にいる天子は遊びたい年頃。つまり何も無い天界は天子にとって退屈なもの以外の何者でもないのだ。だからその暇を解消するために彼女は衣玖の所へとやってくる。
そこまでは別に、衣玖にとって何て事はない。彼女も暇なのである。しかしそれ以降が彼女にとって迷惑なものになる。
暇を解消するために天子はとんでもないことを行おうとし、代表的なのがこの前の紅い雲であるが、その度に衣玖は阻止したりたまに出来なくて巻き込まれたりと精神をすり減らしていた。
それでも、仕方がないと受け入れてしまっている自分もいる。
ため息を一つ零す。そんな迷惑な天子に、しかし何もかも甘受している自身に対して。
「暇なら地上から来た鬼のところへ行ってみたらどうです?潰せるでしょう、暇ぐらい」
言いながら痛みがようやく退いたので、天子に手で退くように指示をする。彼女は珍しく躊躇うことも無く従い、そっと立ち上がった。
そうしてから少しの間考えるように顎に手を添え、数秒後になにかを閃いたらしく口を開いた。
「そうね、じゃあ衣玖も行きましょう」
先ほどの問いに天子はそうにっこり笑いながら答え、手を差し伸べてきた。衣玖は少しだけ、伸べられた手に目を見開く。
「…拒否権はなしですか」
「当たり前じゃない。貴女がいないと楽しくないもの」
ね、と念を押されて、しかもそんなことを言われては仕方がない。諦めて衣玖はその手を取る。そうして天子の力を借りながら立ち上がった。彼女の笑顔がより一層深まり機嫌がよくなる。
行くわよ、声を掛けられ手を取られたまま一緒に歩き出した。向かうは鬼の所。いざ潰さん暇。嬉しそうに繋いだ手を天子は遠慮なくぶんぶん振る。腕が痛くなったけれども、そのままにさせておいた。
ため息を衣玖は一つ零す。
そんな迷惑な幼心地と、そんな幼心地の何もかもを甘受している自身に対して。



迷惑でもやっぱり、貴女といるのは楽しいから。


羽衣を取られた天女は天に帰れないため、取った相手と結婚をすると云う。
「……」
「な、なんですかその眼はっ?」
今の天子の衣玖を見る眼は、好奇心に満ち溢れている。つまり衣玖の羽衣を取ってやろうだとか如何せん邪な考えを持っているということになる。
身の危険を感じた衣玖は羽衣を庇うように抱えた。
その態度を見て少し拗ねたような表情を浮かべ、天子は諦めたように視線を逸らした。衣玖はやれやれと肩をすくめる代わりに込めていた力を抜く。
「隙ありいいいいいいい!!」
「っ!?」
その隙を、突かれた。
ガツン、悲鳴を上げる暇も無く押し倒され、悲鳴を呑み込む程の痛みが頭に走る。涙が少し出たかもしれない。痛む後頭部を衣玖はさする。
目の前にいてつまり衣玖の上に乗っかっている天子は勝ち誇ったような表情を浮かべる。今の体勢の意味が解っているのかいないのか、多分解っていないだろう。第一彼女は目的を果たせるならば他人の気持ちなど微塵も考えず実行に移す。今のこの体勢が良いたとえだ。
衣玖は羞恥で一度顔を赤く染め、しかし次は一気に蒼白になる。これは、ヤバイ。
「さぁ衣玖!観念しなさい!」
「観念も何も無いですよ!」
ばたばたと暴れてみる。これはそこそこ作業妨害ができるらしく、天子は鬱陶しそうに表情を歪めた。
「それに、その伝説には続きがあるんですよ!」
今の今まで衣玖の手から羽衣を取ろうと忙しなく動いていた天子の腕がぴたりといきなり止まって少しだけ驚く。そしてしめた、とも思う。チャンスだと言わんばかりに衣玖は口許を少し緩めて言葉を紡ぎ続けた。
「…結婚した後その天女と人間は子を授けました。ですが天女は、羽衣が見つかったらそれらを捨てて天界へ帰ったのです」
羽衣を取られた天女と取った人間が結婚したのは、もちろん本当だ。そして子を授けたのも、本当。
そして天女は取られていた羽衣を取り返すと夫は勿論、子供まで見捨てて天界へ帰っていってしまったのも、本当のこと。
彼女自身がその人間と結ばれることを望んだわけじゃない。
けれど、それでも、結婚して、子供まで授けたのだから、それなりの感情はあったのだろう。
それをなんの躊躇いも無く切れるなんて。
否もしかしたら悩んだのかもしれないけれど、それでも結果的にそれらを全て捨てて天界に帰ってしまった。
「私はそんなことしたくないです」
そんな生半可な気持ちで結婚なんかしたくない。
そんな潔く人を見捨てて行きたくなんかない。
「…衣玖、」
「だからどうか、お止め下さいませんか」
本音だ、正真正銘の。
その伝説の二の舞になるようなことは絶対にしたくないという、本音。
こんなに自分の意見を述べるのは久しぶりかもしれない。今まであまり自分というものを主張していなかったから。
「……」
天子は答えない。何かを考え込むように、衣玖をじぃと見つめている。これは受理か、それとも拒否か。
「羽衣を取るのはやめてあげる」
漸く、彼女の口が開いた。どうやら受理をしてくれたようだ。衣玖はふぅと一息吐いて、また肩をすくめる代わりに力を抜く。
「けど、貴女を私でいっぱいするのはやめない」
「え」
なんだ、それ。
ポカンと間抜けに浮かべた表情を天子は薄く笑う。なんて無防備なんだろう、おかしいからひとつ口付けを落としてみた。
「っ、」
彼女が息を呑んだのが判った。
「それで衣玖が私でいっぱいになったら、私に羽衣頂戴ね」
唇を離してにこりと微笑みかけてみたら衣玖は真っ赤になって固まってしまった。天子はまた薄く笑う。時間の問題だ。その内私の所へ来て顔を真っ赤にしながら怖ず怖ずと羽衣を渡してくるだろう。嗚呼楽しみだ、非常に。
「…っ、…」
何か言おうとして、上手く言葉が出てこなかったから渋々呑み込んだ。
つくづく、いやらしい人だと、いやらしいやり方をすると、思う。こんなに人を搔き乱して。
もうきっと、いっぱいなんじゃないだろうか、あなたで。



A lot
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