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暮雨吉
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 東方(旧作)や音楽などで生きてます。
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約一ヶ月前、それは気まぐれで書いた日記についてのコメントだった。




そんな訳で柚季さんの一言でやろうと思います、プレイ 日記 模様。
日記じゃなくて模様なのは日記にすらなってないからです。


あの後、東方人形劇wikiにて秘封倶楽部ライバルパッチを見つけたのでそれを適用し、最初から始めました。
もちろんライバルの名前は「しける」なんてしけた名前なんかじゃなくてですね……

toho-ningyougeki13.png

秘封倶楽部のマエリベリー・ハーン……通称メリーです!!
(ドットはライバルですけど本編ではちゃんとメリーです)

名前を入力し、オーキドに色々と電波的なことを言われながらも、ゲームスタートです。

toho-ningyougeki14.png

おお…蓮子ですね、蓮子ですよ。可愛いですね蓮子。

秘封ライバルパッチなので細かい所もきちんと設定されています。
最初のあらすじ紹介の所がもっともな文章に変えられてたり、(スクショ取り忘れorz)
その為自分の家ではなく親戚の家となっていたり。

toho-ningyougeki15.png

おおう…ホントテンション上がってきたな……。

当然となりの家はライバルの家ですが、ライバルはメリーなのでナナミ(でしたっけ)の家となっていたり。
中に入り話しかけ、弟の話をしますが……

toho-ningyougeki16.png

知らぬ存ぜぬ。

さてはてうろうろしても始まらず、しかし草むらにはいる前にオーキドの研究所に入ってみましょう。
そこにはみなさんご存知でお馴染みの彼女がおります。

toho-ningyougeki17.png

めりいいいいいいいいいい!!!
蓮子と並ばして見ます。あああああ秘封倶楽部ですよ!蓮子とメリーですよ!あああ可愛いなあああちゅっちゅしたいです蓮子とちゅっちゅちゅっちゅ。
とか何とか思いながら画面の前で悶えたのは私だけでいいです。最低です。

とりあえず話かけてみます。

toho-ningyougeki18.png

台詞もメリーですねぇ…ああ、可愛いですメリー。蓮子も可愛いです。目の保養になります。
どうやら一足先にオーキドに捕まってしまったらしいメリーさん。これから蓮子も捕まりにイッテキマス。

少女連行中……(蓮子だけに)

toho-ningyougeki19.png

捕まっちゃいました。(まぁ捕まらないと話が進まないのです)

とにもかくにも秘封倶楽部は変なおじさんオーキドに捕まり、ポケモンについて説明をされます。
いきなりのことに冷静なメリーもたまらず一言。

toho-ningyougeki20.png

もっともな意見です。

話は進み、どうやら太っ腹なオーキド博士、ポケモンを一匹くれるようです。
知らない人にはついていってはいけないし物も貰ってはいけないと昔からお母さんに言われてますが、そんなのこの世界には通用しないようです。常識に囚われずにいきましょう。

とりあえず一匹一匹ポケモンを見ていきましょう。

toho-ningyougeki21.png

一匹目はちびみこポケモンのちびれいむ、

toho-ningyougeki22.png

二匹目はメイドポケモンのちびさくや、

toho-ningyougeki23.png

三匹目はしろくろポケモンのちびまりさでした。

さんざん迷った挙句、ちびまりさにしました。
「だんまくは パワー だぜ!」
可愛いです魔理沙可愛いです。

そのあと恒例のライバルにポケモンバトルを申し込まれる、ですが、当然メリーに申し込まれました。
ですがねぇ…その時のBGMがなんと!少女秘封倶楽部なのですよ!
いやあ嬉しいですねぇこれは。テンション上がります。おかげでライバルとのバトル前が楽しくなります。

ちびまりさに対抗し、メリーはちびさくやを選んだようです。どうやらちびさくやはぼうぎょが高いらしく、こうげきするもあんまり減りません。
更にちびまりさはぼうぎょが低い為、ちびさくやのこうげきで結構なダメージをくらいます。
途中ピンチになり、惜しみながらもキズぐすり(本編ではビール)を使用しました。うぐぅ…。
その後苦戦しつつなんとかちびさくやを倒すことが出来ました。
賞金として80円を頂きました。マエリベリーさん……案外少ないのですね。こればっかりは変えられませんが。

バトル終了後二言三言交わし、メリーは楽しそうにポケモンマスターの旅へ行ってしまいました。蓮子も勿論ポケモンマスターの旅へ出ることになります。
オーキドの研究所を出、そして草むらへと入って行き、隣のタウンを目指します。
その途中の草むらにて野生のポケモンと遭遇。

toho-ningyougeki3.png

みすちーと、

toho-ningyougeki4.png

ちびちぇんでした。(ちなみにスクショはオーキドにおとどけものを届けた後に撮ったものです)
これ以外には見つからなかったので、どうやらこの二匹のみが生息するようです。

タウンに着き、さて早速とポケモンセンターへ突入。
BGMは竹取飛翔でした。癒されます。

その後フレンドリィショップへと入り店員からオーキドにとどけものを頼まれ、しぶしぶ届けていきます。
これはポケモンの元と同じですね。
無事届け終わり、オーキドからポケモン図鑑を授かります。当然メリーも一緒です。

これから本格的にポケモンマスターへの道を目指して蓮子とメリーのふたりは旅をしていきます。
果たしてこの先には一体何が待ち受けているのでしょう、

とぅーびーこんてぃにゅーど!!
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≪悪ガキ二人。≫ 2008/9.15


「はい」
「そんな訳で」
「連れてきちゃいましたー」
「付いてきちゃいましたー」
にこにこ。屈託のない笑顔がふたつ、目の前に咲き誇る。それは酷く無邪気で無性に腹立たしく妬ましい。
笑顔の一方、星熊勇儀がいやぁとこぼし、頭に手を回しながら訳を話した。
「魔理沙が旧都に来たいって云うからさぁー」
にこにこ。
笑顔の一方、霧雨魔理沙がでさぁとこぼし、腰に手を当てて続きを話した。
「そしたら勇儀が連れて行ってくれるって云うからさぁー」
にこにこ。
そして私は、そいつらの話を聞いて幻滅した。
「……あんたら、私がなんのために橋の番してると思ってんのよ」
この金髪どもめ。私もだけど!
目の前の能天気な金髪どもは私の言葉を聞いて首を傾げる。しかもタイミングが合ってる。こいつら電波でも飛ばしあっているのかしら。
確認するかのように二人で顔を見合わせ、こちらを向く。
「いや」
「それは」
最初の登場時と同じようにぽつりぽつりと言葉を紡いで、
「橋が友達」
「だからじゃないのか?」
いつか妬み殺す。
「ねー」じゃないわよ。何確認し合ってるのよ。妬み殺すわよ。


(悪ガキ二人。)




勇儀さんと魔理沙でパルスィが振り回されてたらいいなぁ、という話。
きっと気が合うはず。といいますか、基本的に鬼と魔理沙は気が合うと思う。







≪ツイラク ~in love.≫ 2008/11.8


何かにおちる音がした。



           ツイラク ~in love.




すごく、頼りない。見た目からそんな印象を受けた。

「ははっ…一応うちじゃあ優秀なんだよ、これでもね」

苦笑いを浮かべながら頬を掻きつつ、そう賞したのは骨っ子椛の上司。確か哨戒天狗の中でもそこそこの上層部に所属する奴だったかしら。彼の浮かべた苦笑い は、まるで私が思っていることを前以て予想していたような、またこれかとでも思うような、そんな顔。これまでにもそう言われもしくは思われてきたんだろう なぁと窺えた。
否、しかし。
この子の身体的特徴を見るとどうしてもそこに行き着いてしまうのだ。

「えーっと………、ちゃんと食べてる?」
「はいっ、毎日三食欠かさず食べてますっ!」

恐る恐る、と謂った体で訊いたのだけれど、骨っ子椛はそれを打ち消すように元気良く答えた。少し呆気に取られる。そして何やらぶんぶんという音も聞こえる。
その時喉仏ぐらいまで「だとしても、随分とほっそい身体してるねぇ」という言葉が達していたけれども言わないでおいた。多少なりともコンプレックスになっているだろうから、言ったらきっとしょんぼりした表情を浮かべる。
ふぅ、と。一つため息を吐いて私命名―骨っ子椛こと犬走椛をもう一度頭のてっぺんから足のつま先までじぃっと眺める。その途中でガチガチに固まった身体を 必死に解すように、ぶんぶんと尻尾を振っているのが目に入った。さっきの音の出所はこれか。あと張り詰めた耳も。なんだか白狼じゃなくて犬みたい、なん て。そんなこと言ったらきっとしょんぼりするんだろうなぁって思ったから、これまた言わないでおいた。

「…で。何でしたっけ、用件」

椛をしみじみと眺めすぎて、否彼女の頼りないひょろりとした身体と実力とのギャップが激しすぎて大事な用件を忘れてしまった。これは職業にちょっと危険を もたらすかもしれない。何事も真実を伝える、これがブン屋だ。その為にはその時の状況をすばやく把握しすばやく記憶し、それを如何に簡潔に、且つ的確に文 章に変換し相手に伝えるか。一流の記者の腕はここなのだ。
私の言葉を聞いて椛の上司は先ほどの苦笑いとは異なる、少し楽しそうな、可笑しそうな、随分と気の緩んだやわらかい苦笑いを浮かべた。椛は複雑そうな顔だったけど。
その表情を保ったまま、彼は私の質問に答えた。

「指南だよ、彼女の」
「ああ…」

思い出した。




書きかけのままお蔵入りの話。一応あやもみ。
これを書いていた当時の椛像を惜しみなく出しました。勿論今は変わっております。いつかの機会で出せるといい。







≪痛優。≫ 2009/1.23


痛くない筈はない。きっと痛い。とても痛い。きっととても痛いのだろう。
なのに、どうして。
どうして、どうして、どうして。
「ねぇ、なんでよ」
口の中が粘つく。そして絶えず鉄の味が広がっていた。どんなに唾液に絡めて飲み込んでも、それは無くなりやしない。
わたしの問いかけにお姉様は潤んだ瞳で返す。言葉で返さなかったのは彼女の口が必死に酸素を求めていたからだと思う。それとも、恐怖や痛みで声が出なかったのだろうか。
「なんで何も言わないの。痛いとか嫌とかこわいとか気持ち悪いとか、なにか言ってよ。なんで黙ってるの」
前言は撤回する。お姉様に限って恐怖や痛みで声が出ないなんてことはない。たとえ感じていても、出さないだけだ。
今もそう。出ないんじゃなくて「出さない」だけ。こんなおかしいわたしに何も言わない、言ってくれない、言ってくれやしない。何故なら彼女はこの世界の誰よりも優しくて、この世界の誰よりも愚かだから。誇り高い吸血鬼なんて、ハッタリも良いところだ。
先程の問いかけにも、お姉様は言葉を紡がなかった。ただ、目を少し細めただけだった。なんで黙ってるの。黙ってるから調子に乗っちゃうんだよ。ねぇ、なにかいって。お願いだから。
「黙ってるから、だまってるからまたこうやって繰り返しちゃうんだよ。黙ってないでなにか言ってよ。ねぇ、お姉さま。拒否してよ、拒絶してよ。はやく、否定して、わたしを、総てを、おかしいって、ねぇ、おねえさまッ!!」
普通じゃない。正常じゃない。わたしは気が狂っているのだ。495年間幽閉されながらずっとそう思って、そして疑わなかった。
おかしいわたしはなにもつくりだすことができない。そんなわたしにふさわしい能力。「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」。与えることは出来ない。奪うことしか出来ない。わたしは有力で無力だ。
それなのにお姉様は苦しいくらい優しくわたしを了承して、受容して、わたしの総てを肯定する。正気だって、狂気じゃないって、495年間ずっとそう信じ続けている。
違うのに。わたしは正気じゃないのに。狂気だから、こんなことをしちゃうのに。なんで拒否しないの、拒絶しないの、否定をしないの。
「…また、だんまり?」
わたしの叫びは空しく地下室に響くだけだった。その声に答えてほしかった人は、やはり何も答えてくれやしなかった。
優しさが、痛い。




実は当時のことが思い出せない。なんで書いたんだろうなぁ。






≪ただの『あい』の話。≫ 2009/2.11


この気持ちはなんだろう。
答えはすぐに浮かび、しかし認識する一歩手前のところでかき消した。
この気持ちを"それ"と認めたくなかった。

「……小悪魔」
「なんでしょう、パチュリーさま」

わたしはパチュリーさまの使い魔として、図書館の司書を任されている。主に魔理沙さんの手によって荒らされた本を整理するのが仕事である。他にも咲夜さんに代わって紅茶を淹れたりもする。味は、やっぱり劣るけれども。
今日も今日とて荒らされた本を整理していたら、唐突にパチュリーさまに声を掛けられた。手を止めて振り向き、返事をする。
めずらしい。彼女がわたしに声を掛けるのは、たいてい客人(アリスさんとか妹さまとか、一応魔理沙さんもふくむ)が来たときぐらいなのだ。そうでもない時に声を掛けることは、今までで、そう、両手で足りるか足りないか、その程度。
普段のパチュリーさまは本をずっと本を読んでいるから自然とそうなる。ましてやお互い、積極的に話を掛ける性分でもないから、余計に。それでも何一つ不便は感じないからこのままで良い。少なくとも今現在は。

「貴女、恋でも患ってるの?」

――――は?

「ぱ、…ぱちゅりー……サマ?」

この百年魔女は何と言いやがりました?
こい? 濃い? 来い? 故意? 鯉?
―――――恋?

「in love. 恋愛の恋のことよ。…変な方向に取らないでよ」

しばらくの間、きっと彼女に間抜けな顔を晒していたと思う。開いた口が塞がらないとはこういうことなんだろう。
最後に付け足された言葉は最早耳に届いていなかった。その前に意味を悟ってしまったから。
パチュリーさまは口を開けたまま固まったわたしを訝しむように見つめる。小悪魔、小悪魔? 声が聞こえた。怪訝を帯びたその声で名を呼び掛けようとも、今のわたしにはそれに答えられるまでに思考回路は回復していない。
いまだに頭の中では、彼女の先程の言葉が響き渡っている。

『貴女、恋でも患ってるの?』

無意識、無意識に、ほんの数瞬の無意識に載せて、パチュリーさまの言った言葉に答えていた。

「恋、……なんて、そんなのじゃありませんよ」

ちがう。ちがう、ちがう。
恋じゃない。
恋なんてものじゃない。
そんなのじゃ、ない。
絶対に絶対にそんなのじゃない。
あの人を見るたびに心が躍っても、あの人の姿に釘付けになっても、あの人の声に聞き惚れても、あの人に触れたいと思っても、あの人を愛しいと感じても、それは絶対に恋なんてものじゃない。

「小悪魔」

名前を喚ばれ、無意識から意識を取り戻した。はっと焦点を目の前の魔女に合わせ、姿を視認する。
彼女はわたしを真っ直ぐ見つめていた。
矢のように、ナイフのように、光のように、まっすぐわたしを見つめていた。

「貴女は……恋を、患っているわね」

わたしは震える声で言った。

「            。」

この気持ちが恋だとは、この先もずっと認めないだろう。認めてしまえば同時に叶わないと判ってしまうから。
すこしでも良いから、夢を見ていたかった。

■■しています、お嬢さま。




こあレミという新境地を開拓したので早速ふくらませてみた。
おぜう様は紅魔館のみんなに愛されていると思います。







≪やさしい彼女の襲い方≫ 2009/3.13


じんわり広がった頬の痛みを押し込むように、そこに手を添えた。
荒い息遣いが聞こえる。わたしではなく、目の前の、お姉様。視線を一足早くお姉様に戻すと、彼女は平手打ちの構えのまま、驚いた顔と泣きそうな顔をしていた。打たれた勢いで逸らされていた顔を彼女に向けると、涙を堪えた瞳で睨み付けてくる。
「ッ、…は、っ、はっ……!」
何か言おうとして、息が詰まって、言えなくて、お姉様は一層強くわたしを睨み付ける。その紅い視線を一瞥で受け取り、彼女のくしゃくしゃになった服とその隙間から見える白い肌を見つめた。
赤黒い点が、いくつも散っている。
「ははは…ごめんねお姉様、いきなり」
吃驚したよね。そう付け加えたら、ぴくりとお姉様が震えた。それから連鎖反応のように震えが全身へまわる。睨み付けていた瞳は今や恐怖に染まっていて、わたしのなかの心をじりじり焦がす。
三歩ほど空いていた距離を詰めるとお姉様は人間の子供のように酷く怯えた様子で後ずさった。尚も詰めるとその分必死にお姉様も空けたけど、やがて壁によって不可能になる。こつんと小さな背中が大きな壁にぶつかり、絶望と恐怖が迫っていく。
わたしはにっこりとした笑顔を浮かべ、小さな小さなかわいい子供となった姉を見る。
「これ、いたかったよ」
少し赤くなりつつある頬に手を添え、軽い圧力と恐怖をかける。尤も今のお姉様にとっては重い、のだけれど。
びくりと大袈裟に姉の方が跳ねた。
非常に愉快だった。先程までわたしを睨んでいた吸血鬼が、小さく非力な子供へと変わり果てたのが。自然に口許がひきつる。心がじりじり焦げていく。
「お返しに、すっごく痛くしてあげるね」
焦げきって、中身が溢れた。




フラレミが書きたくて仕方がなかった時期の話。今は健全なスカーレット姉妹が書きたいですね。
タイトルの「やさしい」は「優しい」でも「易しい」でも良いそうです。






≪無題≫ 2009/11.16


這い上がろうと、もがいてももがいても沈むばかりだった。
水が満ちる。

聖、と村紗は呼ぶ。白蓮は手元の本から視線を移して本人を見る。常々その透き通った黒曜石のような瞳が村紗は好きだと思うのだ。
開いた距離を詰め、存外に細くうすい肩に服越しから触れる。途端にふぅわり漂う香りを村紗は愉しんだ。とても気分がいい。なにかがひたりと満ちる気がした。
腕を首にまわす。肩に今度は顎を載せる。抵抗はない。強く引き寄せる。一層深くなった香りを胸に溜める。溺れている錯覚に陥った。遠い昔に体験したものとは違う、ひどく甘い溺死。どうしたのとうかがう視線を感じた。村紗はようやく口を開く。

「なにを読んでいるのですか」
「借り物です。書名は…」
「ああ、あの賢将からですね」
「なかなかに面白いから、と」

そう言って白蓮は照れたように笑った。花のような笑顔だ。それはたまらなく愛しいものだと村紗は知っている。またひたり、ひたりと満ちる。息苦しさが生まれた。それに村紗はまだ気付かない。
覗きこんだ本の文を少しだけ読み、そうして先ほど聞きそびれた本の名前に気付く。ああ、これなら、と心内に呟く。数百年前といった頃合いに読んだことを覚えている。

「流石賢将と言った所かな。私もこれは面白いと思っていたのです」
「それはそれは。存外に気が合うやもしれませんね、貴方たちは」
「それは…多分ないでしょう。……どうにも、あの賢将は苦手で」

白蓮はその言葉に、驚いたような、ほぅとした息を洩らす。村紗は明るく社交的で、 基本的に誰とも打ち解けられる。その村紗が苦手とする相手がいるという事実に白蓮は驚いた。相手がナズーリンである所は問題ではない。
少し困っ た顔を浮かべて村紗は続けた。より強く引き寄せられるのを白蓮は感じた。耳元に村紗の顔が近づく。

「何処か見透かしたようなきらいがありまして、ね…苦手なだけで、嫌いというわけではないのですが」
「仕様のないことです。多かれ少なかれ個人には苦手とする相手がいる、それだけのことですよ」
「そう言ってくれるとありがたいです、聖」

顔をあげ礼と笑顔を向けるとさも自身のことのように感じてくれる彼女がいる。笑っていた。村紗は再び沈み溺れるような感覚に陥る。ひたりと水嵩が増す。先ほどから白蓮の香りが妙に甘ったるく感じる。ようやく少しくらいの息苦しさに気付いた。
きゅぅ、と締め付けられる胸に、理由を見つけることは出来なかった。すれば成すことはなく、ならば気にせず白蓮へと意識を戻す。 くるぶしに水嵩が至る。
ただ名を、いつものように名を呼ばれただけだった。

「……水蜜?」

しっとりと水が増す。

「ひじ、り」

息苦しさがいきなり増した。驚いて胸をおさえ、余計に苦しかった。何、と疑問を感じる暇はなかった。

「水蜜、どうしたのですか、水蜜?」

まるで溺れている時のような気がした。昔の記憶が痛みを伝えながら鮮明によみがえる。自身とともに沈んでいく船の破片を見つめながら深い深海へと墜ち る。苦しく、冷たく、深く、故に水面から差す光が厭に眩しくあたたかくて目を瞑った。ああ、思い出す。しかし違った。違う。それとはちがう。

「…聖、その本の下人は、やはり盗人になるんです」

しとりしとりと水が満ちる。それ に墜ちて、沈んで、溺れてしまえば決して生きては帰れない。甘い溺死をしてしまう。
村紗はその水が腰に届く気がした。甘い香りがする。白蓮の体から漂う。水蜜、声がして、名を呼んで、一層に水嵩が増した。

「水蜜、みなみ…っ」
「『そうしなければ死んでしまう』、という理由で」

ねぇ聖、と村紗はいつもの声で白蓮を呼ぶ。

「いま私は、溺れてしまいそうなのです」

首筋に村紗の息がかかり、白蓮は少しだけの身震いをする。気付けば背中のジッパーが下げられていた。しかし白蓮は何もしなかった。村紗は知っている。白蓮は受け入れることしかしないことを。拒むことをしないことを。
白く映えるうなじに唇を寄せる。村紗の胸の息苦しさが少しだけ和らぐ。唇を寄せた白蓮の肌はシルクのようになめらかで、村紗は恍惚に笑った。ひどく甘ったるく感じる。

「っ、ッ…みな、みつ……」
「敢えて理由を言うならば下人と同じですよ。こうしないと死んでしまう」

肌を寄せるたびに、唇を寄せるたびに、息苦しさは和らいでいく。代わりに水嵩は増していった。
気付けばもう、這い上がれないほどに沈んで溺れていた。
それで良いと村紗は笑う。冷たい水に溺れるより、温かい白蓮に溺れるなら。
そうして村紗は二度目の溺死を味わった。





ムラ白が好きなのですが、どうにも少なかったので自家発電であります。しかし書き進めていくほどに自分でもよくわからない展開に。
個人的に聖にベタ惚れなムラサ船長だと思ってます。


≪Please Close Eye≫ 2008/5.20


このまま、目が覚めなければいいと思った。



授業が終わって、帰りの支度も終えて教室を出る。帰りだから当然のごとく廊下には人がたまりにたまっていた。それには意をかえさず私はひとつの教室を目指す。
いつもなら廊下には必ずと言って良いほど彼女がいるはずなのだが今日はいなかった。理由は、別に解っていない訳ではないけれどだからと言って確信があるわけではない。ただ、何となくそうだろうなって感じただけ。
彼女と言うのは私ことマエリベリー・ハーンが所属している二人だけのサークル、秘封倶楽部のもう一人のことだ。
私には普通の人とは違う特殊な目を持っている。境界を見る程度の能力―それ故に良く別の世界へいってしまったりするのは余談である。
彼女にも私とは違うが普通の人とは違う特殊な目を持っている。星と月に場と時を見出だす程度の能力―しかし待ち合わせには遅れてくる。そのことに常々疑問を感じている。同じく余談だけれど。
カツン、廊下に足音が一際大きく響く。
私は少し下げ気味だった顔をつと上に上げる。そして此処が彼女がまだいるであろう教室だと確認して、戸に手をかけた。

ガラリ。

聴覚が、扉を開けた音だけに支配される。廊下はあんなに騒がしかったのに、何故か扉を開けた刹那にその声が一瞬にして消えてしまった。

カツン。
カツン。

私の足音だけが静かに、しかし力強く確かに響く。
教室には誰もいない、訳ではない。一人いる。彼女だ。
彼女は顔を机に伏せ、未だ微動だにしない。
つまり、そう言うことだ。

「蓮子」

彼女―宇佐見蓮子はあろうことか大学の教室で居眠りをしているのだった。道理でいつもはいるはずの場所にいないわけだ。
先程にも云ったように、大体予想はできていたのだ。ただ確信が持てなかっただけで。
そして今、確信した。

「蓮子」

再び呼び掛けた。返事は同じく無い。解っていたけれど。
ふぅとため息をついて仕方なしに蓮子の肩に手を添え軽く揺する。これで起きてくれればいいのだけれど。

「蓮子起きて」
「んっ、ぅ…」

期待なんてそんなにしてなんかいなかった。だから別に蓮子が起きなくても予想通りだったから気にしない。
蓮子は鬱陶しそうに声を漏らし、私の手から逃れるように少しだけ体を遠ざけた。

「蓮子」

起きない。また再び夢の世界へ旅だったようだ、心地よい寝息が聞こえ始める。

「蓮子」

ならば私は起こすまでだ。
離れた分だけ詰めより、また肩に手を添え軽く揺すり始める。ゆさゆさ、小刻みに揺れる。

「んー…」

明らかに不機嫌そうな声が聞こえた。鬱陶しそうに肩に添えた私の手を軽く払って体勢を整えより深く机に伏せる。ぐにゃりと力なく蓮子の体が歪む。

「…」

負けた。否別に競ってはいなかったけれど。でも正直言って蓮子がここまでだとは思っていなかった。個人的に寝起きは良さそうな気がするのだけれど、あくまで気がすると言うことだったと証明できた。いいことだと思う。多分。
ならば、

「…蓮子」

起きないのならば好き勝手をやらせてもらおうじゃないの。
多分、ちょっとした悪戯心が芽生えたんだと思う。例えると、あれ、私の中の悪魔が囁いたみたいな、そんな感じかしら。大体そんな感じ。
ふ、と今度は肩ではなく髪に手を這わす。さらりと抵抗なく蓮子の髪は私の手を呑み込む。まるで絹のようだと思った。すごく、綺麗。
夢の中へと沈み込んだ蓮子に反応はなかった。唯為されるが儘。

「…」

すぅ。
寝息が聞こえる。静かに静かに広い教室に、響いて。

臆病者なのだ。
普段なら蓮子に、蓮子の髪にさわるなんて怖くて恐くて出来やしない。
今彼女は寝ていて、だから私がやっていることを把握することなんて出来ない。臆病な私はそれを利用して蓮子に触れる。
蓮子の前髪を指で退かす。現れるのは瞳を覆う瞼。この瞼が開いてしまえば私は触れることができなくなる。
ずっと、ずっと。触れていたい。
だから。

このまま、目が覚めなければ良いと思った。




メリー→蓮子な話。
当時の秘封熱は半端無かった。そして未熟。今もですけど!






≪うでの中。≫ 2008/6.15


こんな気持ちはなんて名づける?

―解らない、けれど。



うつらうつらと夢と現実世界をさまよう。ブラックアウトしたり、しなかったり。
ただ感じるのは、妙に熱い体温と、咲夜の体温。そして心地よさ。気持ちがいい。このまま夢の世界へ飛び立てるなら尚、気持ちがいい。けれどそうしないのは、
「…咲夜」
咲夜が、果たして許してくれるか。
今私たちは外にいて、私がここで寝てしまうと咲夜が私をおぶるだの抱くだのかかえるだのして紅魔館に帰ることになる訳で。
なんだかとても申し訳ない。
「…咲夜、」
今一度彼女の名を紡ぐ。呼んでいる訳じゃない。復唱するように、呟くように、そう紡いでいるだけ。
「…咲夜」
紡ぐ。
「咲夜」
ただ、紡ぐ。
「さく、」
刹那にくちびるに咲夜の長くて白くて綺麗な細い指が触れた。驚いて視線を上げると、優しげに微笑んできゅ、と少し強く抱き締めてきた。まるで私の我儘を許すような、おやすみなさいって云ってるような。
どきん。
胸が、鼓動する。
咲夜にも聞こえたかもしれない。否、きっと聞こえた。こんなに密着しているのだから聞こえないはずないと思う。 


こんな気持ちはなんて名づける?
解らないけど、身体は熱い。

こんな気持ちはなんて名づける?
―解らない、けれど。 


羽の付け根辺りを咲夜の指が撫でる。くすぐったい。そういうと咲夜は楽しそうに笑って、私もつられて笑って。
おやすみなさいって言われた気がしてゆっくり目を閉じた。 


とくん。
こんな気持に名前が無くても、わからなくても、胸にともしたのはたしかな心。

朝が近づいて、眠くなったら、咲夜のうでの中で夜まで眠るの。
気持ちがいいなぁ。




愛しの紅魔組。
ご覧の通り某ヴォーカルアレンジを意識しました。あれはすごく良い。







≪魔法をかけてあげる≫ 2008/6.21


きらきら、きらきら。
弾幕が砕けて、破片が舞い散る。光を反射して眩い色を映し出す。
そんななか、魔理沙が箒とともに落ちていく。堕ちていく。墜ちていく。まっ逆さまに地へと。

不意に彼女と、目があった。
笑って、いた。

『魔法をかけてあげる』

弾幕ごっこを始める前、魔理沙はそういった。やわらかい声とやわらかい口調で、愉しそうに宣言した。
私はにやりと挑発するように笑って「やれるものならやってみなさい」とあまり本気にしていなかった。私だって魔法使いだから魔法なんて簡単に使える。まぁ私の場合は人形がメインだけれど。魔法をかけてあげるなんて今更だ、そんなの。

だったけれど。
弾幕ごっこには勝った。魔理沙はまっ逆さまに地へとおちている。

だったけれど。

「…しまったわ」

勝負には負けた。
私は見事、彼女のかけた魔法にかかってしまった。

目の前には弾幕の破片が舞い散る。きらきら、きらきらとまばゆく光を反射して幻想的な光景を作っている。
そのなかで真っ逆さまにおちていく白黒一人。

「素敵な光景よ、魔理沙」


七色が恋色に負けた。




七色人形遣いさんが恋色魔法使いさんに魔法をかけられた話。魔法の名前は「スターダストレクイエム」、効果はその光景を素敵だと思うでした。いま考えたから嘘だけど。
七色人形遣いさんは光景だけが素敵と思ったのではなく、真っ逆さまにおちていく恋色魔法使いさんも含めて素敵と思ったのでした。そこはちょっとしたこだわりでもあります。すきすき魔理沙だいすきなアリスさんが好きです。
----- 書くことが無いので日記のあとがきをそのまま抜粋。恥ずかし過ぎて死ねる。







≪なく≫ 2008/6.21


げろげろ、蛙の鳴き声が夜空にしんと静かに響く。げろげろ、げろげろ。大合唱は止まらない。
けろけろ、そのなかでぽつりと、蛙の神様の泣き声が夜空と鳴き声に溶け込む。けろけろ、けろけろ。涙は止まらない。

げろり。泣かないでと蛙は鳴く。続いてまたひとつ、泣かないでと蛙が鳴く。げろり、げろりと慰みの歌がしんと響く。
神様はありがとうみんなと言いながらも瞳から流れる涙は止まなかった。とまらない。そしてまた泣き声が静かに溶ける。

蛙の神様が泣きながら言った。もう君たちとは此の地では二度と会えないと。
蛙たちは歌いながら答えた。あなたとは思い出のなかでいつでも会えると。
その言葉を聞いて、神様は目を丸くした。そして嬉しそうに笑った。

ずっと、ずっと忘れないでね、私も忘れないから。と神様は言った。
大丈夫、死ぬまで否死んでも、あなたを忘れませんよ。と蛙たちは言った。


げろげろ、げろげろ。蛙の鳴き声が響く。さよならと別れを告げるように。
蛙の神様の泣き声はもうない。神様が湖をゆっくりと渡って消えていったのと一緒に、消えてしまった。

げろげろ、げろげろ。蛙の泣き声が響く。いまはもういない神様をおもって。
忘れないように、交わした最後の約束を絶対に死んでも破らないように。

そして、
いつか、
いつか、
思い出のなかなんかじゃなくて、
いつかまた、同じ地面を踏みしめてともに鳴き合えることを信じて。

げろげろ、げろげろ。

夜空にしんと静かになきごえは響いていった。




蛙と蛙神(じゃないけど)のささやかな大きなお別れ話。
BGMは梅雨時の蛙の鳴き声で。泣き声とも言うのかな?

諏訪子にとって蛙はかけがえのない大切な子で、蛙にとっても諏訪子はかけがえのない大切な方なんだと思います。
むしろ諏訪子にとって人間より蛙の方が大切なんじゃないかと、それくらい蛙を信用していて同じくらい蛙も諏訪子のことを信用しているのでは。それは人間同士の信頼関係というより動物同士の信頼関係といったほうがぴったり。
それはとても狂信的でありながら、美しい関係だと私は思います。







≪ゆめであえるだけでよかったのに。≫ 2008/7.24


目を閉じて夢に堕ちれば、あなたに会える。
それだけでよかったのに。


「勇儀?」
声が聞こえる。ああこれはとても懐かしい声だ。懐かしい、けれど一度も忘れたことなんかなかった。夢に堕ちれば必ず聞ける、声。
「…すい、か?」
「勇儀!やっぱり勇儀だ!」
萃まる香り、そう書いてすいかと読む。きれいな響きを持っていると口にする度に思う度に感じる。そして彼女自身も太陽のような雰囲気を漂わせている。。
私のか細い返事は正直届いているか判らなかったけれどちゃんと萃香に聞こえたらしく、途端、声が弾んだ。
「萃香、一体…どうやって?」
「ちょっと紫に頼んで地上と地底を結んでもらってるんだ」
勇儀と話したくてね、にへへと笑って萃香は言った。
ああ、なんて残酷なことをするんだろう。
夢のなかで、あえるだけでよかったのに。
「…くそ」
会いたくなる。
触れたくなる。
その目を、見たくなる。
その手に、触りたくなる。
萃香。
溢れ出した気持ちはコップから溢れ出した水のように止まらない。溢れて、こぼれて。
涙が出そう。
「ゆめであえるだけでよかったのに。」




鬼’sの話。ちまたじゃあ勇パルがメジャーですが、私は勇萃、パル勇派です。マイナーさーせん。だか後悔はしていない。
「もしあなたが一番会いたい誰かに会えるとしたら会う?会わない?」的な話で勇儀さんは会わない方だったんだけど萃香はもちろん会う方でその結果勇儀さんは抑えてた感情がだーっと出てきたみたいな感じです。途中で結構なげやりになったね。
ああ…昔のってどうしてこうも黒歴史になるのだろうか。







≪なにも無い。≫ 2008/7.30


「死ぬの?」
「死にます」
彼女は天人でもなければ天女でもない、ただのしがない竜宮の使いだ。ならば当然寿命があるのは仕方がないこと。死があるから生があり、生があるから死がある。自分とは、違う。
「…そっか、死ぬのね」
不思議とその事を受け入れてしまう。悲しい訳じゃ、ないのだけれど。
きっとどこかで覚悟をしていたのだろう。所詮天人は置いていかれる側なのだから。
「ねえ、今のきもちってどんな感じ?やっぱり怖いの?」
すると彼女はとても哀しそうな顔を浮かべた。ぎょっとして、焦る。これは禁句だったのだろうか。
「よく、わからないです。まるで感情が消えてしまったみたいで、なにも思うことができず、なにも感じることができないのです」
その表情はなんだ、と思ったけれど言わないでおいた。なんだか言ってしまったら彼女がぐちゃぐちゃになってしまいそうだったから。
そう、なんだ。そう曖昧にこぼして、わたしは空を見る。相変わらずなにもない空だった。
「ねえ、衣―――…」
そうして、なにもないそらに彼女はなにごともなかったように消えた。




天界組。
衣玖さんに寿命はあるのだろうか、いやあるだろうと言う妄想の結果。彼女はあくまで竜宮の使いですから。天人は基本不老不死と考えてます。置いていかれる側。
置いていく側と置いていかれる側、果たしてどちらが辛いのやら。つらいともからいとも。







≪あなただけ。≫ 2008/8.13


お姉様の寝顔を初めて見たとき、死んでいるみたいだと思った。死んだように静かで死んだように動かなくて。生気を感じられなかった。もちろん今のお姉様の 寝顔もそうだけど。寝ているときってみんなそうなのかなと思ったけれどたぶん違う。お姉様だけだ。綺麗な寝顔。スカーレット家当主に相応しい美しさ。流石 お姉様って思ったけれど本当に死んでるんじゃないかって心配にもなってきた。
起こそうかな、って思った。私はお姉様の肩に手を伸ばし、かけた所でやっぱり止めた。なんだか申し訳無い罪悪感がこみ上げてきて(私にしたら少し珍しい事)起こす気になれなかった。
仕方がないからずっと観察してたら僅かに胸が上下してた。ああ、生きてるんだなぁ。耳を澄ましたら虫の息みたいな寝息も聞こえてきた。ああ、生きてるんだなぁ。よかった。
なんだか私も眠くなってしまった。ふぁ、あくびを一つこぼして目尻に溜まった涙を拭いながら私も寝ようかな、ときびすを返した。もう少しで朝だ。よいこはもう寝る時間。
お姉様、おやすみなさい。そう言って暗い冥い地下室へ戻る。明日はなにして遊ぼうとかお姉様と一緒に紅茶でも飲もうかなとか思いながら暗い冥い地下室の温 かいベッドに潜って眠りに就く。直前、私も寝顔はお姉様みたいに生気が感じられないのかなと思ったけれどきっと違うと思った。だってあの寝顔はお姉様だけ の、お姉様だけに相応しいものだもん。




スカーレット姉妹。
一回まじまじと姉の寝顔を見てふと「こいつ生きてんのかなぁ」と思ったことをフランちゃんとレミリア様で書いてみました。きっとおぜうさまの寝顔はかわいいと言うより美しい死体みたいな感じだろうな。妹様は判らんが。
というか、友人にはなしたらすごく微妙な表情で返されたよ!







≪咬≫ 2008/8.21


妹は能力を抑えようとして一月に二、三回、反動で深い眠りに堕ちる。最低でも三日、酷い時は一週間くらいずっと眠っている。否、眠ってしまう。つまりそれくらいあの子の能力は厄介で面倒で手がかかる、と言うこと。
いいことだと思う、能力を抑えようと奮闘するのは。私たちや周りをそれだけ想っているんだと感じる。けれどもう少し、私たちや周りを思って欲しいものだ。



がりガリ。
「……お嬢様」
がり、がり。
「お嬢様」
「…何、咲夜」
「失礼、します」
そう言って彼女は私の手を少しだけ強引に掴み、いつの間にか用意していた消毒液を指先の爪にそっと垂らした。何事だと思って最初は驚いたけれど、気付く。
「あぁ、…」
また、か。
また、この癖か。
爪をがりがりガリ、と。
噛む、癖。
爪を噛むのは、昔から在った癖だ。勿論ほぼ無意識のうちに行っていたけれど、今ほどに酷くはなかった。こんな血が出るほど噛んだりは、こんな爪がなくなるほど噛んだりは、それに気付かないほど噛んだりは、しなかった。
咲夜は何も言わず表情も浮かべず黙々と私の爪に手当てをしている。親指だけじゃなかったらしく人差し指にも消毒を施し、絆創膏を貼る。自分が気付かず他人が気付くなんて。相変わらず困った癖だ。
「…気を付けて下さいよ」
ぽろりと呆気なく咲夜が一言洩らす。
「善処は、するわ」
口で言うならなんだって出来る。嘘だって、本当だって、約束だって、別れだって。ましてや生かすことだって殺すことだって出来る。しかしそれ故に口は災いを呼ぶ、と思っている。
「……。…終わりました」
静かに立ち上がった咲夜の表情は見えなかった。笑っているのか、泣いているのか、怒っているのか。多分、呆れてるのかも。
指先に貼られた絆創膏は鉄みたいに冷たく、未だに少しだけ流れ出ている私の血を冷やしていくように感じた。



▼ ▼ ▼



お姉様。フランはまず起きて私を呼ぶ。そして次に今日は何日、と訊く。私は優しく微笑んで頭を撫でながら日付を答える。その答え次第で彼女は一喜一憂をする。それが、あまり好きではない。
今日は四日ほど眠っていたフランが目を覚ました。そしていつものようにお姉様、と私を呼んだ。
大抵フランが目を覚ますときは私が会いに行っている時が多い。今回もそうだった。会いに行って傍らで読書をしていたりたまにフランの髪を撫でたりしている と目を覚ます。まるで私に合わせているみたいで嬉しくなるけれど、やっぱり気のせいだって判ってもいる。偶々、なんだ、たまたま。
フランの呼び掛けに私はなぁにと答える。そして例の如く今日は何日、と訊いてきた。
「……フラン、」
「ね、お姉様、答えて。今日は何日?」
かつては喜ぶ時とか、悲しむ時とかが判らなかった。三日で悲しそうにする時もあれば一週間でも嬉しそうにする時もあったから。でも今は三日でも一週間でも何でも、悲しそうにする。それが嫌。フランの悲しそうな顔は見たくない。
言い淀む私の顔をじっと真っ直ぐに見つめる。何処かの恋色の白黒魔法使いみたいだとちらりと思った。曲がることなく貫く瞳は酷く純粋で無垢で、しかしそれ故に非道く残酷だ。
「…心配しなくてもいいわ。まだ十八日よ」
本当は、二十日だ。
口は言うなら何でも出来る。しかし何でも出来るからこそ災いを呼ぶのだ。
私は今嘘を吐いた。ついてしまった。些細な、軽い嘘だけれどフランドールにはとても非道い嘘だ。そんな嘘を私は今最愛の妹に吐いてしまった。
だから、何でも出来るから、口は災いを呼ぶのだ。



「もう、駄目なの、フラン?」
珍しいよりもおかしさを感じさせる。深い眠りに堕ちて目が覚めたあとは五日くらいは絶対にまた堕ちることはないと思っていたのに。
「ごめんなさい……お姉様」
「謝らなくていいの、仕方がないことだから…ね」
そう言っていつものように頭を撫でる。さらりさらりとフランの髪の毛が揺れた。
あぁ、ああ。仕方がないことだと解ってるけど判ってるけどわかってるけどそれでももう少しだけこの甘い声を聞いていたいし貫いてくるこの澄んだ瞳を見ていたい。
フランの目が、閉じかかっている。私の意思などそこには無い。またしばらくのお別れねフラン。あぁ嫌だな。あぁ嫌だねフラン。まだ話していたいのに見つめ合っていたいのに。
「フラン」
名残惜しみがのこる声色で口から彼女の名前が紡がれた。ほぼ無意識の行動。それでもフランは反応して、瞼がひくりと動いていた。
「……ふ……、ん、ど…………」
ぼそりとした声を聞き取ることは出来ずに、そして聞き返すことが出来ずに暫くの別れを迎えた。また明日、ではない。また目覚めるまで、だ。
「……」
冷えた指先を見る。咲夜が貼ってくれた絆創膏を剥がすと噛んで半分くらいはなくなっていた爪は伸び、傷も塞がっていた。
あぁ。
また、か。
折角伸びたのにまた噛ませてなくさせて血を出させて。そうして冷たい絆創膏を貼るのか。
咲夜はどんな表情を浮かべるだろう。何も浮かべず「気を付けて下さいよ」と「終わりました」とだけ言って静かに立ち上がるのだろうか。
そうしてまた私も変わらずに「善処は、するわ」と嘘を吐くのだろうか。
あぁ。
また、か。




スカーレット姉妹。ただいまフランside執筆中。完成は未定。行動遅くてすいません。
爪を噛む癖のある子って寂しがり屋とか親の愛が足りてないとかっていう説があるんですってね。それをお嬢様に当てはめて発展させた結果がこれだよ!
珍しくそこそこ長ったらしいもの。しかし長ったらしいゆえぐだぐだしている。くそ過ぎる。
とりあえず私に才能なんて無いって(昔から知ってたけどね)再確認しました。うぃっす。







≪どんかん≠ばか≫ 2008/9.14


こいつは馬鹿なんじゃないだろうか。ちがう、間違いなく馬鹿だ。どうしてこんな馬鹿さを曝せるのか解らない、妬ましい。あああああ妬ましい。
「そっかそっか、パルスィはこうやって触れ合って遊びたい年頃なんだね」
な訳あるか。どんな年頃だ。ガキって云いたいのか。妬み殺すわよ。
からからと笑う目の前の脳味噌筋肉馬鹿を、睨む。行動の真意に気付け。それよりも脳味噌まで筋肉になるほど筋トレに励めるなんて、妬ましいわ。
どうしてこうも鈍いのだろう。私は鈍さを通り越して馬鹿と思ってるけれど。
これは病的だ。過言ではない。
「その、角。なんであるのよ」
「うん?まぁそれは…鬼だからねぇ」
折れないかなと思って角に手を伸ばし、力を込めたら星熊が困ったように笑って「折れたら困るし痛いからやめて」と云った。
大人しく止めておいた。けど、邪魔なのよ、それ。
「……何をしても、」
手を握ったり、抱き締めたり、見つめたり。そして今、押し倒したり。
言葉ではまだ言ってないけど、行動では表してるのに。
「気付かないし、わかってないし…」
「……パルスィ?」
好きと伝えた方がいいのか、
キスを伝えた方がいいのか、
脳味噌筋肉馬鹿の思考回路なんて解らないし判らないけれど。

せめて今は押し倒したあとにやることができる勇気がほしい、なんて、欲張り過ぎて妬ましいわ。




パル勇。これをきっかけにパル勇本格的に視野に入れ始めました。みんなもパル勇の良さに気付けばいいのに。
とりあえず精神的にはパルスィ、肉体的には勇儀さんが優れてると思う。
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