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暮雨吉
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 東方(旧作)や音楽などで生きてます。
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≪Please Close Eye≫ 2008/5.20


このまま、目が覚めなければいいと思った。



授業が終わって、帰りの支度も終えて教室を出る。帰りだから当然のごとく廊下には人がたまりにたまっていた。それには意をかえさず私はひとつの教室を目指す。
いつもなら廊下には必ずと言って良いほど彼女がいるはずなのだが今日はいなかった。理由は、別に解っていない訳ではないけれどだからと言って確信があるわけではない。ただ、何となくそうだろうなって感じただけ。
彼女と言うのは私ことマエリベリー・ハーンが所属している二人だけのサークル、秘封倶楽部のもう一人のことだ。
私には普通の人とは違う特殊な目を持っている。境界を見る程度の能力―それ故に良く別の世界へいってしまったりするのは余談である。
彼女にも私とは違うが普通の人とは違う特殊な目を持っている。星と月に場と時を見出だす程度の能力―しかし待ち合わせには遅れてくる。そのことに常々疑問を感じている。同じく余談だけれど。
カツン、廊下に足音が一際大きく響く。
私は少し下げ気味だった顔をつと上に上げる。そして此処が彼女がまだいるであろう教室だと確認して、戸に手をかけた。

ガラリ。

聴覚が、扉を開けた音だけに支配される。廊下はあんなに騒がしかったのに、何故か扉を開けた刹那にその声が一瞬にして消えてしまった。

カツン。
カツン。

私の足音だけが静かに、しかし力強く確かに響く。
教室には誰もいない、訳ではない。一人いる。彼女だ。
彼女は顔を机に伏せ、未だ微動だにしない。
つまり、そう言うことだ。

「蓮子」

彼女―宇佐見蓮子はあろうことか大学の教室で居眠りをしているのだった。道理でいつもはいるはずの場所にいないわけだ。
先程にも云ったように、大体予想はできていたのだ。ただ確信が持てなかっただけで。
そして今、確信した。

「蓮子」

再び呼び掛けた。返事は同じく無い。解っていたけれど。
ふぅとため息をついて仕方なしに蓮子の肩に手を添え軽く揺する。これで起きてくれればいいのだけれど。

「蓮子起きて」
「んっ、ぅ…」

期待なんてそんなにしてなんかいなかった。だから別に蓮子が起きなくても予想通りだったから気にしない。
蓮子は鬱陶しそうに声を漏らし、私の手から逃れるように少しだけ体を遠ざけた。

「蓮子」

起きない。また再び夢の世界へ旅だったようだ、心地よい寝息が聞こえ始める。

「蓮子」

ならば私は起こすまでだ。
離れた分だけ詰めより、また肩に手を添え軽く揺すり始める。ゆさゆさ、小刻みに揺れる。

「んー…」

明らかに不機嫌そうな声が聞こえた。鬱陶しそうに肩に添えた私の手を軽く払って体勢を整えより深く机に伏せる。ぐにゃりと力なく蓮子の体が歪む。

「…」

負けた。否別に競ってはいなかったけれど。でも正直言って蓮子がここまでだとは思っていなかった。個人的に寝起きは良さそうな気がするのだけれど、あくまで気がすると言うことだったと証明できた。いいことだと思う。多分。
ならば、

「…蓮子」

起きないのならば好き勝手をやらせてもらおうじゃないの。
多分、ちょっとした悪戯心が芽生えたんだと思う。例えると、あれ、私の中の悪魔が囁いたみたいな、そんな感じかしら。大体そんな感じ。
ふ、と今度は肩ではなく髪に手を這わす。さらりと抵抗なく蓮子の髪は私の手を呑み込む。まるで絹のようだと思った。すごく、綺麗。
夢の中へと沈み込んだ蓮子に反応はなかった。唯為されるが儘。

「…」

すぅ。
寝息が聞こえる。静かに静かに広い教室に、響いて。

臆病者なのだ。
普段なら蓮子に、蓮子の髪にさわるなんて怖くて恐くて出来やしない。
今彼女は寝ていて、だから私がやっていることを把握することなんて出来ない。臆病な私はそれを利用して蓮子に触れる。
蓮子の前髪を指で退かす。現れるのは瞳を覆う瞼。この瞼が開いてしまえば私は触れることができなくなる。
ずっと、ずっと。触れていたい。
だから。

このまま、目が覚めなければ良いと思った。




メリー→蓮子な話。
当時の秘封熱は半端無かった。そして未熟。今もですけど!






≪うでの中。≫ 2008/6.15


こんな気持ちはなんて名づける?

―解らない、けれど。



うつらうつらと夢と現実世界をさまよう。ブラックアウトしたり、しなかったり。
ただ感じるのは、妙に熱い体温と、咲夜の体温。そして心地よさ。気持ちがいい。このまま夢の世界へ飛び立てるなら尚、気持ちがいい。けれどそうしないのは、
「…咲夜」
咲夜が、果たして許してくれるか。
今私たちは外にいて、私がここで寝てしまうと咲夜が私をおぶるだの抱くだのかかえるだのして紅魔館に帰ることになる訳で。
なんだかとても申し訳ない。
「…咲夜、」
今一度彼女の名を紡ぐ。呼んでいる訳じゃない。復唱するように、呟くように、そう紡いでいるだけ。
「…咲夜」
紡ぐ。
「咲夜」
ただ、紡ぐ。
「さく、」
刹那にくちびるに咲夜の長くて白くて綺麗な細い指が触れた。驚いて視線を上げると、優しげに微笑んできゅ、と少し強く抱き締めてきた。まるで私の我儘を許すような、おやすみなさいって云ってるような。
どきん。
胸が、鼓動する。
咲夜にも聞こえたかもしれない。否、きっと聞こえた。こんなに密着しているのだから聞こえないはずないと思う。 


こんな気持ちはなんて名づける?
解らないけど、身体は熱い。

こんな気持ちはなんて名づける?
―解らない、けれど。 


羽の付け根辺りを咲夜の指が撫でる。くすぐったい。そういうと咲夜は楽しそうに笑って、私もつられて笑って。
おやすみなさいって言われた気がしてゆっくり目を閉じた。 


とくん。
こんな気持に名前が無くても、わからなくても、胸にともしたのはたしかな心。

朝が近づいて、眠くなったら、咲夜のうでの中で夜まで眠るの。
気持ちがいいなぁ。




愛しの紅魔組。
ご覧の通り某ヴォーカルアレンジを意識しました。あれはすごく良い。







≪魔法をかけてあげる≫ 2008/6.21


きらきら、きらきら。
弾幕が砕けて、破片が舞い散る。光を反射して眩い色を映し出す。
そんななか、魔理沙が箒とともに落ちていく。堕ちていく。墜ちていく。まっ逆さまに地へと。

不意に彼女と、目があった。
笑って、いた。

『魔法をかけてあげる』

弾幕ごっこを始める前、魔理沙はそういった。やわらかい声とやわらかい口調で、愉しそうに宣言した。
私はにやりと挑発するように笑って「やれるものならやってみなさい」とあまり本気にしていなかった。私だって魔法使いだから魔法なんて簡単に使える。まぁ私の場合は人形がメインだけれど。魔法をかけてあげるなんて今更だ、そんなの。

だったけれど。
弾幕ごっこには勝った。魔理沙はまっ逆さまに地へとおちている。

だったけれど。

「…しまったわ」

勝負には負けた。
私は見事、彼女のかけた魔法にかかってしまった。

目の前には弾幕の破片が舞い散る。きらきら、きらきらとまばゆく光を反射して幻想的な光景を作っている。
そのなかで真っ逆さまにおちていく白黒一人。

「素敵な光景よ、魔理沙」


七色が恋色に負けた。




七色人形遣いさんが恋色魔法使いさんに魔法をかけられた話。魔法の名前は「スターダストレクイエム」、効果はその光景を素敵だと思うでした。いま考えたから嘘だけど。
七色人形遣いさんは光景だけが素敵と思ったのではなく、真っ逆さまにおちていく恋色魔法使いさんも含めて素敵と思ったのでした。そこはちょっとしたこだわりでもあります。すきすき魔理沙だいすきなアリスさんが好きです。
----- 書くことが無いので日記のあとがきをそのまま抜粋。恥ずかし過ぎて死ねる。







≪なく≫ 2008/6.21


げろげろ、蛙の鳴き声が夜空にしんと静かに響く。げろげろ、げろげろ。大合唱は止まらない。
けろけろ、そのなかでぽつりと、蛙の神様の泣き声が夜空と鳴き声に溶け込む。けろけろ、けろけろ。涙は止まらない。

げろり。泣かないでと蛙は鳴く。続いてまたひとつ、泣かないでと蛙が鳴く。げろり、げろりと慰みの歌がしんと響く。
神様はありがとうみんなと言いながらも瞳から流れる涙は止まなかった。とまらない。そしてまた泣き声が静かに溶ける。

蛙の神様が泣きながら言った。もう君たちとは此の地では二度と会えないと。
蛙たちは歌いながら答えた。あなたとは思い出のなかでいつでも会えると。
その言葉を聞いて、神様は目を丸くした。そして嬉しそうに笑った。

ずっと、ずっと忘れないでね、私も忘れないから。と神様は言った。
大丈夫、死ぬまで否死んでも、あなたを忘れませんよ。と蛙たちは言った。


げろげろ、げろげろ。蛙の鳴き声が響く。さよならと別れを告げるように。
蛙の神様の泣き声はもうない。神様が湖をゆっくりと渡って消えていったのと一緒に、消えてしまった。

げろげろ、げろげろ。蛙の泣き声が響く。いまはもういない神様をおもって。
忘れないように、交わした最後の約束を絶対に死んでも破らないように。

そして、
いつか、
いつか、
思い出のなかなんかじゃなくて、
いつかまた、同じ地面を踏みしめてともに鳴き合えることを信じて。

げろげろ、げろげろ。

夜空にしんと静かになきごえは響いていった。




蛙と蛙神(じゃないけど)のささやかな大きなお別れ話。
BGMは梅雨時の蛙の鳴き声で。泣き声とも言うのかな?

諏訪子にとって蛙はかけがえのない大切な子で、蛙にとっても諏訪子はかけがえのない大切な方なんだと思います。
むしろ諏訪子にとって人間より蛙の方が大切なんじゃないかと、それくらい蛙を信用していて同じくらい蛙も諏訪子のことを信用しているのでは。それは人間同士の信頼関係というより動物同士の信頼関係といったほうがぴったり。
それはとても狂信的でありながら、美しい関係だと私は思います。







≪ゆめであえるだけでよかったのに。≫ 2008/7.24


目を閉じて夢に堕ちれば、あなたに会える。
それだけでよかったのに。


「勇儀?」
声が聞こえる。ああこれはとても懐かしい声だ。懐かしい、けれど一度も忘れたことなんかなかった。夢に堕ちれば必ず聞ける、声。
「…すい、か?」
「勇儀!やっぱり勇儀だ!」
萃まる香り、そう書いてすいかと読む。きれいな響きを持っていると口にする度に思う度に感じる。そして彼女自身も太陽のような雰囲気を漂わせている。。
私のか細い返事は正直届いているか判らなかったけれどちゃんと萃香に聞こえたらしく、途端、声が弾んだ。
「萃香、一体…どうやって?」
「ちょっと紫に頼んで地上と地底を結んでもらってるんだ」
勇儀と話したくてね、にへへと笑って萃香は言った。
ああ、なんて残酷なことをするんだろう。
夢のなかで、あえるだけでよかったのに。
「…くそ」
会いたくなる。
触れたくなる。
その目を、見たくなる。
その手に、触りたくなる。
萃香。
溢れ出した気持ちはコップから溢れ出した水のように止まらない。溢れて、こぼれて。
涙が出そう。
「ゆめであえるだけでよかったのに。」




鬼’sの話。ちまたじゃあ勇パルがメジャーですが、私は勇萃、パル勇派です。マイナーさーせん。だか後悔はしていない。
「もしあなたが一番会いたい誰かに会えるとしたら会う?会わない?」的な話で勇儀さんは会わない方だったんだけど萃香はもちろん会う方でその結果勇儀さんは抑えてた感情がだーっと出てきたみたいな感じです。途中で結構なげやりになったね。
ああ…昔のってどうしてこうも黒歴史になるのだろうか。







≪なにも無い。≫ 2008/7.30


「死ぬの?」
「死にます」
彼女は天人でもなければ天女でもない、ただのしがない竜宮の使いだ。ならば当然寿命があるのは仕方がないこと。死があるから生があり、生があるから死がある。自分とは、違う。
「…そっか、死ぬのね」
不思議とその事を受け入れてしまう。悲しい訳じゃ、ないのだけれど。
きっとどこかで覚悟をしていたのだろう。所詮天人は置いていかれる側なのだから。
「ねえ、今のきもちってどんな感じ?やっぱり怖いの?」
すると彼女はとても哀しそうな顔を浮かべた。ぎょっとして、焦る。これは禁句だったのだろうか。
「よく、わからないです。まるで感情が消えてしまったみたいで、なにも思うことができず、なにも感じることができないのです」
その表情はなんだ、と思ったけれど言わないでおいた。なんだか言ってしまったら彼女がぐちゃぐちゃになってしまいそうだったから。
そう、なんだ。そう曖昧にこぼして、わたしは空を見る。相変わらずなにもない空だった。
「ねえ、衣―――…」
そうして、なにもないそらに彼女はなにごともなかったように消えた。




天界組。
衣玖さんに寿命はあるのだろうか、いやあるだろうと言う妄想の結果。彼女はあくまで竜宮の使いですから。天人は基本不老不死と考えてます。置いていかれる側。
置いていく側と置いていかれる側、果たしてどちらが辛いのやら。つらいともからいとも。







≪あなただけ。≫ 2008/8.13


お姉様の寝顔を初めて見たとき、死んでいるみたいだと思った。死んだように静かで死んだように動かなくて。生気を感じられなかった。もちろん今のお姉様の 寝顔もそうだけど。寝ているときってみんなそうなのかなと思ったけれどたぶん違う。お姉様だけだ。綺麗な寝顔。スカーレット家当主に相応しい美しさ。流石 お姉様って思ったけれど本当に死んでるんじゃないかって心配にもなってきた。
起こそうかな、って思った。私はお姉様の肩に手を伸ばし、かけた所でやっぱり止めた。なんだか申し訳無い罪悪感がこみ上げてきて(私にしたら少し珍しい事)起こす気になれなかった。
仕方がないからずっと観察してたら僅かに胸が上下してた。ああ、生きてるんだなぁ。耳を澄ましたら虫の息みたいな寝息も聞こえてきた。ああ、生きてるんだなぁ。よかった。
なんだか私も眠くなってしまった。ふぁ、あくびを一つこぼして目尻に溜まった涙を拭いながら私も寝ようかな、ときびすを返した。もう少しで朝だ。よいこはもう寝る時間。
お姉様、おやすみなさい。そう言って暗い冥い地下室へ戻る。明日はなにして遊ぼうとかお姉様と一緒に紅茶でも飲もうかなとか思いながら暗い冥い地下室の温 かいベッドに潜って眠りに就く。直前、私も寝顔はお姉様みたいに生気が感じられないのかなと思ったけれどきっと違うと思った。だってあの寝顔はお姉様だけ の、お姉様だけに相応しいものだもん。




スカーレット姉妹。
一回まじまじと姉の寝顔を見てふと「こいつ生きてんのかなぁ」と思ったことをフランちゃんとレミリア様で書いてみました。きっとおぜうさまの寝顔はかわいいと言うより美しい死体みたいな感じだろうな。妹様は判らんが。
というか、友人にはなしたらすごく微妙な表情で返されたよ!







≪咬≫ 2008/8.21


妹は能力を抑えようとして一月に二、三回、反動で深い眠りに堕ちる。最低でも三日、酷い時は一週間くらいずっと眠っている。否、眠ってしまう。つまりそれくらいあの子の能力は厄介で面倒で手がかかる、と言うこと。
いいことだと思う、能力を抑えようと奮闘するのは。私たちや周りをそれだけ想っているんだと感じる。けれどもう少し、私たちや周りを思って欲しいものだ。



がりガリ。
「……お嬢様」
がり、がり。
「お嬢様」
「…何、咲夜」
「失礼、します」
そう言って彼女は私の手を少しだけ強引に掴み、いつの間にか用意していた消毒液を指先の爪にそっと垂らした。何事だと思って最初は驚いたけれど、気付く。
「あぁ、…」
また、か。
また、この癖か。
爪をがりがりガリ、と。
噛む、癖。
爪を噛むのは、昔から在った癖だ。勿論ほぼ無意識のうちに行っていたけれど、今ほどに酷くはなかった。こんな血が出るほど噛んだりは、こんな爪がなくなるほど噛んだりは、それに気付かないほど噛んだりは、しなかった。
咲夜は何も言わず表情も浮かべず黙々と私の爪に手当てをしている。親指だけじゃなかったらしく人差し指にも消毒を施し、絆創膏を貼る。自分が気付かず他人が気付くなんて。相変わらず困った癖だ。
「…気を付けて下さいよ」
ぽろりと呆気なく咲夜が一言洩らす。
「善処は、するわ」
口で言うならなんだって出来る。嘘だって、本当だって、約束だって、別れだって。ましてや生かすことだって殺すことだって出来る。しかしそれ故に口は災いを呼ぶ、と思っている。
「……。…終わりました」
静かに立ち上がった咲夜の表情は見えなかった。笑っているのか、泣いているのか、怒っているのか。多分、呆れてるのかも。
指先に貼られた絆創膏は鉄みたいに冷たく、未だに少しだけ流れ出ている私の血を冷やしていくように感じた。



▼ ▼ ▼



お姉様。フランはまず起きて私を呼ぶ。そして次に今日は何日、と訊く。私は優しく微笑んで頭を撫でながら日付を答える。その答え次第で彼女は一喜一憂をする。それが、あまり好きではない。
今日は四日ほど眠っていたフランが目を覚ました。そしていつものようにお姉様、と私を呼んだ。
大抵フランが目を覚ますときは私が会いに行っている時が多い。今回もそうだった。会いに行って傍らで読書をしていたりたまにフランの髪を撫でたりしている と目を覚ます。まるで私に合わせているみたいで嬉しくなるけれど、やっぱり気のせいだって判ってもいる。偶々、なんだ、たまたま。
フランの呼び掛けに私はなぁにと答える。そして例の如く今日は何日、と訊いてきた。
「……フラン、」
「ね、お姉様、答えて。今日は何日?」
かつては喜ぶ時とか、悲しむ時とかが判らなかった。三日で悲しそうにする時もあれば一週間でも嬉しそうにする時もあったから。でも今は三日でも一週間でも何でも、悲しそうにする。それが嫌。フランの悲しそうな顔は見たくない。
言い淀む私の顔をじっと真っ直ぐに見つめる。何処かの恋色の白黒魔法使いみたいだとちらりと思った。曲がることなく貫く瞳は酷く純粋で無垢で、しかしそれ故に非道く残酷だ。
「…心配しなくてもいいわ。まだ十八日よ」
本当は、二十日だ。
口は言うなら何でも出来る。しかし何でも出来るからこそ災いを呼ぶのだ。
私は今嘘を吐いた。ついてしまった。些細な、軽い嘘だけれどフランドールにはとても非道い嘘だ。そんな嘘を私は今最愛の妹に吐いてしまった。
だから、何でも出来るから、口は災いを呼ぶのだ。



「もう、駄目なの、フラン?」
珍しいよりもおかしさを感じさせる。深い眠りに堕ちて目が覚めたあとは五日くらいは絶対にまた堕ちることはないと思っていたのに。
「ごめんなさい……お姉様」
「謝らなくていいの、仕方がないことだから…ね」
そう言っていつものように頭を撫でる。さらりさらりとフランの髪の毛が揺れた。
あぁ、ああ。仕方がないことだと解ってるけど判ってるけどわかってるけどそれでももう少しだけこの甘い声を聞いていたいし貫いてくるこの澄んだ瞳を見ていたい。
フランの目が、閉じかかっている。私の意思などそこには無い。またしばらくのお別れねフラン。あぁ嫌だな。あぁ嫌だねフラン。まだ話していたいのに見つめ合っていたいのに。
「フラン」
名残惜しみがのこる声色で口から彼女の名前が紡がれた。ほぼ無意識の行動。それでもフランは反応して、瞼がひくりと動いていた。
「……ふ……、ん、ど…………」
ぼそりとした声を聞き取ることは出来ずに、そして聞き返すことが出来ずに暫くの別れを迎えた。また明日、ではない。また目覚めるまで、だ。
「……」
冷えた指先を見る。咲夜が貼ってくれた絆創膏を剥がすと噛んで半分くらいはなくなっていた爪は伸び、傷も塞がっていた。
あぁ。
また、か。
折角伸びたのにまた噛ませてなくさせて血を出させて。そうして冷たい絆創膏を貼るのか。
咲夜はどんな表情を浮かべるだろう。何も浮かべず「気を付けて下さいよ」と「終わりました」とだけ言って静かに立ち上がるのだろうか。
そうしてまた私も変わらずに「善処は、するわ」と嘘を吐くのだろうか。
あぁ。
また、か。




スカーレット姉妹。ただいまフランside執筆中。完成は未定。行動遅くてすいません。
爪を噛む癖のある子って寂しがり屋とか親の愛が足りてないとかっていう説があるんですってね。それをお嬢様に当てはめて発展させた結果がこれだよ!
珍しくそこそこ長ったらしいもの。しかし長ったらしいゆえぐだぐだしている。くそ過ぎる。
とりあえず私に才能なんて無いって(昔から知ってたけどね)再確認しました。うぃっす。







≪どんかん≠ばか≫ 2008/9.14


こいつは馬鹿なんじゃないだろうか。ちがう、間違いなく馬鹿だ。どうしてこんな馬鹿さを曝せるのか解らない、妬ましい。あああああ妬ましい。
「そっかそっか、パルスィはこうやって触れ合って遊びたい年頃なんだね」
な訳あるか。どんな年頃だ。ガキって云いたいのか。妬み殺すわよ。
からからと笑う目の前の脳味噌筋肉馬鹿を、睨む。行動の真意に気付け。それよりも脳味噌まで筋肉になるほど筋トレに励めるなんて、妬ましいわ。
どうしてこうも鈍いのだろう。私は鈍さを通り越して馬鹿と思ってるけれど。
これは病的だ。過言ではない。
「その、角。なんであるのよ」
「うん?まぁそれは…鬼だからねぇ」
折れないかなと思って角に手を伸ばし、力を込めたら星熊が困ったように笑って「折れたら困るし痛いからやめて」と云った。
大人しく止めておいた。けど、邪魔なのよ、それ。
「……何をしても、」
手を握ったり、抱き締めたり、見つめたり。そして今、押し倒したり。
言葉ではまだ言ってないけど、行動では表してるのに。
「気付かないし、わかってないし…」
「……パルスィ?」
好きと伝えた方がいいのか、
キスを伝えた方がいいのか、
脳味噌筋肉馬鹿の思考回路なんて解らないし判らないけれど。

せめて今は押し倒したあとにやることができる勇気がほしい、なんて、欲張り過ぎて妬ましいわ。




パル勇。これをきっかけにパル勇本格的に視野に入れ始めました。みんなもパル勇の良さに気付けばいいのに。
とりあえず精神的にはパルスィ、肉体的には勇儀さんが優れてると思う。
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