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暮雨吉
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 東方(旧作)や音楽などで生きてます。
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暇、遠くで聞こえた気がした。衣玖はそれを無視する。ひまひま、今度ははっきりと聞こえた。それでも無視を決め込む。暇ぁ!最後に近くで聞こえ、衣玖に何かが突進。予期せぬ自体に彼女は反応が出来ずにそのまま倒れた。
「衣玖ー!暇ぁー!清清しく暇ぁー!」
清清しく暇、とは、一体どういう意味だろう。言葉通り清清しいくらい暇なのだろうか。ぼんやりと衣玖は思いながら、突進ではなくボディーブローをかました天子を見上げる。子供が駄々をこねるような表情でこちらをじっとりと見ていた。
たぶんこころのうちを読むとしたら、簡潔に「暇」。
「…暇でも何でも突進しないでください痛いです重いですそしてうるさいです」
「総領の娘にその口の利き方は何よ!」
「素直に言ったまでですよ」
むぅ、と目の前の幼い顔がむくれた。どうでもいいから衣玖は暫く背中や顎や首やその他諸々現在ものすごく痛い箇所の痛みが退くまで、その幼い顔の持ち主を 放置しておくことに決めた。出来ればこうして放置している間に天子が飽きて、他の人物の所へ行ってしまえばいいとも思う。きっと叶わないだろう、なんて。 解っているけれども。
今自分たちがいる場所、つまり天界は、何も無い。強いて言えば桃と酒、あとは天人たちの宴。それくらいしかない。
地上の人間たちはどうやらこの天界に恋焦がれているようだけれど、こんな何も無いところ、求めた所で何も無いから何も得ることは出来ないだろう。
天界は何も無い所。そして目の前にいる天子は遊びたい年頃。つまり何も無い天界は天子にとって退屈なもの以外の何者でもないのだ。だからその暇を解消するために彼女は衣玖の所へとやってくる。
そこまでは別に、衣玖にとって何て事はない。彼女も暇なのである。しかしそれ以降が彼女にとって迷惑なものになる。
暇を解消するために天子はとんでもないことを行おうとし、代表的なのがこの前の紅い雲であるが、その度に衣玖は阻止したりたまに出来なくて巻き込まれたりと精神をすり減らしていた。
それでも、仕方がないと受け入れてしまっている自分もいる。
ため息を一つ零す。そんな迷惑な天子に、しかし何もかも甘受している自身に対して。
「暇なら地上から来た鬼のところへ行ってみたらどうです?潰せるでしょう、暇ぐらい」
言いながら痛みがようやく退いたので、天子に手で退くように指示をする。彼女は珍しく躊躇うことも無く従い、そっと立ち上がった。
そうしてから少しの間考えるように顎に手を添え、数秒後になにかを閃いたらしく口を開いた。
「そうね、じゃあ衣玖も行きましょう」
先ほどの問いに天子はそうにっこり笑いながら答え、手を差し伸べてきた。衣玖は少しだけ、伸べられた手に目を見開く。
「…拒否権はなしですか」
「当たり前じゃない。貴女がいないと楽しくないもの」
ね、と念を押されて、しかもそんなことを言われては仕方がない。諦めて衣玖はその手を取る。そうして天子の力を借りながら立ち上がった。彼女の笑顔がより一層深まり機嫌がよくなる。
行くわよ、声を掛けられ手を取られたまま一緒に歩き出した。向かうは鬼の所。いざ潰さん暇。嬉しそうに繋いだ手を天子は遠慮なくぶんぶん振る。腕が痛くなったけれども、そのままにさせておいた。
ため息を衣玖は一つ零す。
そんな迷惑な幼心地と、そんな幼心地の何もかもを甘受している自身に対して。



迷惑でもやっぱり、貴女といるのは楽しいから。
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